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side審神者


目の前で笑う無銘刀を見て心底安心する。まだこの本丸に来て数日しか経っていないというのに随分と色々あったような気がする。主に政府の人間騒動と初出陣。初出陣でわかった事だけど無銘刀は本当に強かった。最終的に検非違使を一人で倒したうちのカッコイイ無銘刀について語りたいところだが、それは俺が密かにつけている日記に存分に書く事にする。

真剣必殺?二回連続攻撃?何を日記に書こうかなとワクワクしながら考えていると、無銘刀達の輪から外れていた三日月が近寄ってくる。刀剣男士全員お揃いのパジャマを着用した三日月は、まだパジャマに慣れていないのか盛大にボタンを掛け間違えてる。ダサい。三日月の同室である鶴丸に教えてやれよと布の下で苦笑いしつつ、三日月に何か用かと尋ねれば、真剣な表情でひっそりと声を出した。


「主よ、検非違使の件、どうなったんだ」


真剣な表情とミスマッチなパジャマに内心笑っていたが、三日月の言葉に我に返った。本来函館には出現するはずの無い検非違使が出た事は、流石に政府に報告した。すると返ってきたのは「また確認する機会を設けさせていただきます」という答え。いつどこで何をするのかよく分からないけど、まあ追々連絡は来るだろう。


「多分近々確認テスト見たいなのすると思う」
「てすと?」
「えっ、......チェック?」
「ちぇっく?」


おじじとの言葉の壁が辛い。
最近の刀である無銘刀にテストって横文字以外でなんていうか聞くと、『審査?』と首をかしげた。ああもう刀剣男士っていうのはなんでこう顔が整ってんのかわいい!

思わず無銘刀の頭をぐりぐりと撫でると、無銘刀は目を白黒させながらも顔を赤くして笑った。それにドキュンと心臓をハートの矢で射抜かれるのと同時に思い出す。そういえば今日はとことん無銘刀を甘やかすと決めたんだった。思い出した瞬間頭を撫でていた手を無銘刀の脇に差し込み抱き上げる。


『わ...っ!』
「今日は無銘刀をとことん甘やかす日です!皆協力してね!」


無銘刀を軽く抱き上げて、一期一振達の方に見せながらそう宣言するとノリのいい清光や獅子王がわーと歓声を上げながら拍手をしてくれる。一期一振も穏やかな笑みを浮かべているし、長谷部も目が優しい。無銘刀って愛されてるな...。


「無銘刀、俺ネイル塗ったげる!」
「私とは何かをして遊びましょうか」
「俺は鍛練をしてやろう」
「俺は...えーっと、えー...肩もみでも......」


どうやら何も思いつかなかったらしい獅子王を鼻で笑ったその時。


「主!あと皆!もう朝餉の時間は過ぎてるよ!」


あっごめん忘れてた。



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