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意識が覚醒する。
眠ってしまう前の異常なダルさは吹っ飛び、寧ろ元気だ。手入れって傷だけじゃなく気分的な異常も回復してくれるのかな...なんて思いながらむくりと体を起こすと、障子の隙間から眩しい光が差し込んでいるのに気がつく。


『朝.....?』


俺の手入れそんなに時間が掛かったのか。と若干主に申し訳なさを感じつつ、立ち上がる。
取り敢えず、自室へ戻ろうかな...。

しかし、ここは手入れ部屋。障子を開ければ、自室を出た時の風景とはまるで違う風景に思わず硬直する。こんな場所、あったけ。


「あなや、無銘刀ではないか」
『ぇ、あ、三日月さん...』
「随分早起き...いや、それ以前に怪我をしていた筈。体は大丈夫なのか?」
『そ、それはもう。.....み、三日月、さんも早起きだね.....??』
「はっはっは、もうジジイだからな」


寝巻きというラフな格好の三日月さんに遭遇した。普段きらびやかな服を着こなしているからかギャップが凄い。
そんな三日月さんと話していると、今の時間帯が朝というより早朝と言った方が適していることが分かる。


『あ、あの、ここから俺と一兄の部屋って、どういけば...』
「ふむ...生憎、俺は無銘刀と一期一振の部屋を知らない。案内は出来ないな。」


申し訳なさげに眉を下げた三日月さんに俺は『いえいえそんな』と慌てて三日月さんが気にすることじゃないと主張する。
そんな俺を見て目を細めた三日月さん。慈愛に満ちたその瞳に俺が戸惑っていると、三日月さんがまた「あなや」と呟いた。


「...今日の本丸は早起きだな」


三日月さんの言葉に首をかしげると、遠くに感じる気配と足音。誰かがこっちに来てる、と確信した瞬間、相手側も俺と三日月さんの気配に気がついたのか進む速度を早めた。

バタバタ、と足音を立てて曲がり角から姿を現したのは主。その一拍後に、長谷部さん、一兄、清光、獅子王さんと比較的この本丸で親しい人の姿が現れる。


「「「.......」」」
『.....』


変な沈黙が俺達を包む。え、え、何これ。なんで何も喋らないの。さっきまでおしゃべりだった三日月さんも空気を読んだのか静かなので凄く気まずい。


『あ、あの...、おは、おはよう?』


気まずさに耐えきれなくて俺が言葉を発すると、主も一兄も長谷部さんも清光も獅子王さんも一様に瞳を潤ませ、


「「「無銘刀(くん)....っ!!!」」」


と、こちらに突進してくる。
...えっちょっと待って皆勢いが強い。



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