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『そろそろ...本気、だそうか、な...っ!!』


と、ボロボロになりながら放った攻撃が思った以上に力が入り、あおい敵が倒れた事をきっかけに、これが真剣必殺だと理解する。
そして同時に驚く。何時もの状態とは比べ物にならない程身体が軽い。

___いける。


そう確信して、俺は敵の群れに突っ込んだ。


ああ、薙刀も、太刀も、槍も___


『遅い.....!!』



***



結果的に言えば、勝てた。

勝てたとは言っても、主曰く検非違使という敵のせいで刀装は3つとも見事に剥がれ、結局重傷で帰ってきた。そんな俺を見て、獅子王さんは「あれ思ったより重傷!!!」と慌て、主は涙声で「てっ、手入れ!!」と腫れ物を触るかのようにそーっと抱き上げて急いで手入れ部屋に連れ込んだ。


「怖かっただろ、痛かったよな、...っ、無銘刀、ごめんな」


ぽんぽん、と打ち粉で本体を優しく手入れしながら主が呟く。パタ...パタ...と音がすると思えば、主の顔を隠す布に小さく染みができている。え、あ、なっ、泣いている...!
慌てて俺が主が責任を感じる必要は無い、と主張しようと口を開こうとしたが、頬の傷が痛み、顔を歪めるだけになってしまった。
そんな俺の様子を見て主はまた「ごめん」と震えた声で謝罪する。


『謝らなくて、いい』


手入れの為本体に注がれている霊力からも、悲しいとか申し訳ないという感情が伝わってきたら、頬の傷が痛いとか、気にしていられない。


『俺が...こんな事になったのは.....、俺が弱いから』
「いや、そんな事ない。割とマジで」
『でも...主はちゃんと刀装を持たせてくれたし、で、出来ることはやってくれてた』
「.....でも」
『だから、責任感じないで...お、俺が、ちゃんと強くなる、から』


主の霊力から、「無銘刀のせいじゃないのに」とでも言いたげな感情が伝わってきてああもう俺励ますの下手だな、と頭を抱える。


「...ありがとう.....よし、明日は、絶対甘やかすからな、無銘刀」


そんな下手糞な励ましにもお礼を言ってくれる主。
そんなのいい、という言葉は、声にならなかった。主の霊力がどんどん暖かいものに変わっていって、さっきと桁違いに心地がいい。



ああ、なんだか凄く眠たい。



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