16


昨日のご飯の中では何が美味しかった?
...全部。
ええー本当?嬉しいな。

なんて会話をしていると、「おい光忠」と低い声が上から降ってきた。見上げると、褐色の肌が凛々しい刀剣男士の姿。強そう。


「料理が無くなりかけていたから追加して欲しいと主が言っていたぞ」
「えっ、もう?」
「ああ...はやくしろ」
「はいはい、じゃあ無銘刀君、僕は行くね。また今度」
『あっ、う、うん。また...』


光忠さんがちょっと嬉しそうに俺から離れる。料理は大体光忠さんが作っているらしいし、自分の料理が沢山食べられた事に嬉しさを感じているのだろう。

俺も何か食べようかな、とずり落ちたタスキをかけ直して料理の方に視線を向かわせる。


「おい」


けど、声を掛けられてすぐ振り返った。視界にはさっき光忠さんを呼びに来た人。え、え、まだ居たんだ。俺に何か用があったのかなと思いながら彼の様子を伺う。


「...大倶利伽羅」


じっと見つめていると、暫くの間があって漸くぽつりと言葉が零れた。

おおくりから。

え、どう言う意味だろう。と首を傾げると彼は少し眉を顰めて「名前だ」と付け足した。
それを聞いて初めて彼が俺に自己紹介をしてくれているのだと分かった。そして彼も俺と同じようにあまりコミュニケーション能力が無い事も。


『無銘刀...です』
「!」
『...よ、よろしく...』
「...ああ」


彼は深く頷くと、その場を離れていった。
あ、それだけなんだ...。と思いつつ、さっきから行こうと思っていた料理コーナーへ向かうと、大倶利伽羅さんが言っていた通り色んな料理が無くなりかけていた。

取り敢えずある食べ物を適当に取って、近くのテーブルの席に座って食べ始める。残り物だったから、肉や魚はあまり無かった。

あ、美味しい。


「あなや、野菜ばかりではないか」
『三日月さん』
「肉も食べなければ大きくならないぞ」


食べていると、前から歩いてくる綺麗な顔に気づいた。前はお風呂のお湯でほんのり赤くなっていたが、今は酔って赤くなっている。

隣に座って「ほれほれ、じじいの相手でもしておくれ」と笑う三日月さん。なんかもうさっきから親戚のおっさんか。


『ぅ、お酒臭い...』

「はっはっは」


何が面白いのかずっとニコニコしてる三日月さん。酔うと笑い上戸なのかな。と分析していると、三日月さんはちょっと離れた所にあったお酒を持ってきて。


「無銘刀も飲もう」


と、また笑った。



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