13
無銘刀side
「ああ、無銘刀くん...政府に連れて行かれなくて本当に良かったです!」
政府の人が薬研さんの居る医務室へと行くためこの部屋から姿を消したら、一兄は先程の貼り付けたような完璧な笑みを辞め、へにゃんと崩れた笑みを浮かべて俺を抱きしめた。
...…えっと、これは、も、もしかして。
『心配、してくれた?』
「そうです、ああもう本当に安心しました...っ」
一兄の腕に更にぎゅっと力がこもったその時、スパーーンという鋭い音と共に襖が開いた。襖の方に視線を移すと、そこには二つの影。
「…一兄は何をしているんだ?」
「え?何...流石ショタコン」
薬研さんと、知らない刀剣男士。大きさからいって打刀くらいだろうか。と刀剣男士について推測していると、2人が来たことで正気に戻ったのか一兄が顔を赤くして慌てて俺から離れた。そして咳払いをて「2人はどうして此処に?」と尋ねる。
「政府の旦那が帰ったから報告を」
「俺は作戦成功したなら、近侍に戻してもらおうと思ってさぁ」
刀剣男士は嬉しそうに微笑みながらそう言った。あ...この人主大好きなタイプの人だ。この人がいる時はあんまり主にベッタリにならない様にしよう。
そう思いながら、刀剣男士を見ていると不意にその赤い瞳が俺を写した。
って、...えっ
「えっと、無銘刀だっけ。俺、加州清光。主の近侍は大体俺だよ。よろしくねー」
『、加州、さん。よ、よろしく』
「清光でいい。あ、敬称もいらないから」
『...き、清光...?』
俺が戸惑いながらも名前を呼ぶと、清光は満足気にニヤリと笑った。そして若干のドヤ顔を披露しつつ。
「じゃあ、困った事があれば遠慮なく頼んなよ。なんせ俺は主に信頼される刀剣男士...近侍なんだからね!」
お、おお...。
「ああ...無銘刀くんに妙に友好的だったのは、近侍アピールしたかったからですか」
「大人気ねえ」
二人の言葉に清光が「うるさい」と睨みをきかせながらビシィっと指をつきつけた時、清光の爪に赤いマニキュアが塗られているのに気がつき、思わず『あ、可愛い..』と声が出てしまった。
「...え?...今、か、可愛いって言った?」
俺の言葉に清光が思ったより反応したので、可愛いって言われるのが嫌だったのかと思い、謝ると。
「ち、ちがう。謝んなくていいから、むしろ、その。…ありがとう」
そう言った清光の顔はその瞳や爪より赤かった。