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side審神者



無銘刀の言葉の後、目を見開き硬直した政府の人間。しかしすぐにハッと我に返ったのか「し、しかしですね…無銘刀さん」と話をぶり返す。俺がまだ諦めないのかよ、と半目で政府の人間を見ていると。


「失礼します」


と爽やかな声と共に障子が開いた。
政府の人間からその声の主へ視線を移すと、そこには一期一振の姿。完璧なロイヤルスマイルを披露しているが、目の下の隈で台無しである。うんうん……お前、俺の話聞いてから一睡も出来てなかったもんな、しょうがない。


「主、無銘刀くん、お茶でございます。……ああ、政府の御役人様もどうぞ」
「サンキュー」
『、ありがとう…』


お礼を言って微笑む無銘刀。
守りたいこの笑顔。


「ありがとうございま…え?」


政府の人間も薄く笑いながらお礼を述べようとしたが、お茶の中に入っている一期一振の指を見て最後まで言いきれなかった。


「ああ…申し訳ございません。今すぐお茶を取り替えますね」
「え、いや、あはは、お構いなく」
「ご遠慮なさらずに」


急須から新たなお茶を出す一期一振。そしてそのお茶を湯呑みに入れて、政府の人間に渡す。その時、「ああっ、寝不足のせいで手がすべってしまったぁっ」と一期一振のわざとらしい声と共に政府の人間に向かって熱めのお茶がぶちまけられた。


「あっ、あっつ!!!!!!」


そのお茶を顔面からかぶった政府の人間は怒りからなのか熱さからなのか顔を真っ赤にした。そんな政府の人間に一期一振は追い討ちをかけるように「申し訳ございません!すぐに冷やします!」と冷水を浴びせる。


『い、一兄.....?...あ、あの、だっ大丈夫?』


その無銘刀の言葉は政府の人間を心配したのか、はたまた一期一振の頭なのか。


「スミマセンねえ、今日の近侍は無銘刀と仲良しなんで」
「くっ...成程。いつもは初期刀で近侍の加州清光がお茶を出していたのにどういう事かと思えば、手荒い歓迎だ」
「はは、なんのことだか」


睨み合う大人達と戸惑う無銘刀。
ふぉ、ごめん無銘刀居心地悪いよな!
もうちょっと待って、コイツ政府に返すから!


「御役人様、お怪我をさせてしまい申し訳ございません。うちの薬研に診てもらいましょう」
「それがいい。薬研のいる医務室へどうぞ」


そう強引に医務室に連れていった政府の人間は、あと数分後薬研に「念の為今日は帰んな、旦那。まだ冷やしたりねぇや。」と言われて渋々帰る事になるだろう。しめしめ。



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