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side一期一振



風呂に入っているうちに眠くなり、意識がふわふわとしている無銘刀君の仕草に悶えつつ世話をやいて数十分。眠気で足がおぼつかない無銘刀君を更衣室まで手を引いてあげたり、髪の毛を乾かしてあげたりもした。自分でもお兄ちゃん気質だと思っている身としては、こういう手のかかる子は結構可愛い。


『…んん』
「無銘刀君。もうすぐ部屋に着きますから、少しだけ我慢してくださいね」


今もデレデレしながら無銘刀君を背負って部屋まで運んでいる最中だ。まだ小さくて軽い体に、守ってあげないと。という気持ちが湧き上がってくる。最も、刀剣である彼にとっては余計なお世話かも知れないけれど。


「さ、着きましたよ無銘刀君」
『…ん…あ、りがと…』


そう言って私の背中から降りて、よたよたと部屋に入る無銘刀君。押入れに入っている布団を出すのかなと無銘刀君の姿を目で追うと、そのまま畳の上に寝転がった。


「えっ!無銘刀君、布団、布団!」


私が慌てて声を上げるが、無銘刀君は既に夢の中にいるようで返事が無い。その様子に苦笑いしながら布団を敷いてあげようと、無銘刀君の布団が入っている押入れに近づいたその時。



「あっ、一期!一振!ちょちょちょちょちょ!」



という奇声を発しながら主が部屋に入ってくる。驚きつつ主に声を掛けると「ちょっ、凄いんだって!!!あとヤバイ!!!!!」と大声を出されたので寝ている無銘刀君を指差して睨むと主は大人しく口を閉じた。慌てた様子の主を連れて、部屋から出る。それから少し歩いて「ここで話しましょう」と告げると、主は慌てて刀帳を開いた。


「無銘刀の機動がやばい!桁が違う!!」
「えっ」


と機動が記されている箇所を主が指差す。するとそこには100以上の数値。驚いて思わず声を上げた私に、主は更に爆弾を落とす。


「あと無銘刀が鍛刀できたって政府に報告したら、政府が初めて鍛刀された刀剣男士だから政府に受け渡せって言われたんだけど!!!!どうしよう!!!!?」
「なっ!?!?!?」


主の大声に勝るとも劣らない声を上げた私に、主が「ちょ…他の刀剣男士達寝てるから静かに…な?」と声を掛ける。



アンタが言うんじゃない!!
あと“ちょ”って言い過ぎなんですよ!!!!



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