09

三日月さんにハート柄とイントネーションを説明し終えて数分後。また説明するのは面倒臭いので、なるべく横文字を使わない様にしながら三日月さんと会話していると、ゲッソリと疲れた顔をした一兄がやって来た。


『…あ、一兄』
「無銘刀君…と、三日月殿」
「はっはっは、俺はついでか」
「あっ、すみません」


一兄は慌てて三日月さんに謝罪した後、俺と三日月さんに向けて「ご一緒してよろしいですか」と一言入れる。俺と三日月さんが頷くのを確認してから、一兄は俺の隣に腰を下ろした。

「あ〜、やはり疲れた後のお風呂は最高ですね」
「同感だ。...そういえば今日は五虎退の虎を洗う日だったか」
「ええ、五匹ともなると骨が折れます」
「五虎退の虎は風呂になると豹変するからな」



俺を挟んで話し始める2人。
俺も話に加わりたかったが異常に瞼が重いし意識もまどろんできて、話どころでは無かった。そんな俺の変化に気が付いた一兄が「無銘刀君…?」と心配そうに声を掛けてきたが俺は眠いという単語を途切れ途切れに紡ぐ事で精一杯だった。


「あなや、もうそんな時間か」
「ああっ、無銘刀君、此処で寝たら溺れますよ!ほら、立って!」
『…ん』
「っ!!?!?」


立ち上がる気力すら無かった俺が、立ち上がらせて、という意味で一兄に両手を差し出す。すると一兄は大袈裟に俺から退き、真っ赤な顔で「か、かわっ…!」と声を発しながら狼狽えだした。一兄の様子を不思議には思ったが、今は俺の中の睡眠欲がとてつもない事になっている。なので、立ち上がらしてもらう相手を一兄から三日月さんに変えて再チャレンジ。


『…起こ、して…』


その言葉とともに両手をずいっと三日月さんの方に向けると、一兄よりはマシだったが三日月さんも一兄と同じような反応をしてから、


「…天使か…!」


とだけ呟いた。
…いや、できれば、起こして欲しい。



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