「……だが…」
「最初から全部信用してくれってわけにはいかないのはわかってるから、とりあえずあなたは自分の怪我を治すことだけを考えて」
「……信じて、いいんだな?」
山崎の言葉に志麻が深くうなずき、そのまま彼の手を握る。
「応急処置したのは、あの子?……こんな森の中で、薬も何もかも足りなかったでしょうに。それでもあなたを助けたかったんだろうね、そういう気持ちが伝わってきた。だからあたしもあなたを助けたいって思った」
山崎より一回り以上小さな手だがその手はしっかりとしていて、彼女がこの森の中で過ごしてきた日々を想像させるに足る。
「……あなたのお名前を聞いてもいい?忍者さん」
「俺は…新選組監察方、山崎烝」
「山崎烝さん、ね。……じゃあ烝さん、もう少し眠ってて。目覚めたばっかりなのにこんなに喋って、怪我に障ったらどうするの?」
手が離れて、志麻は山崎の体にかかっている布団をかけ直す。
「君が、それを言うか…?」
まだ彼女に聞かなければならないことがたくさんあるのに、急に強い睡魔に襲われて山崎は瞼を閉じる。
「……おやすみなさい、烝さん」
志麻は山崎の額に手を当てて熱を測る。
「え、と……傷の手当ては後にするとして…解熱の薬草が足らなそうだから取りに行かなきゃ」
彼の持ち物の中に石田散薬という薬があったが何に効くのだろうか。血にまみれてしまって使えそうにはないが山崎が落ち着いたら訊ねてみようと考えながら志麻は立ち上がり、出入口近くの壁にかけてあった鉈を取る。
「……まったく、怪我人が寝てるってのに野暮だねぇ」
遠くから草を踏みしめて近づいてくる足音を聞きつけて彼女は目をすがめ、もう一度山崎を振り返ってから家を出た。
深山に咲く
山崎くん生存ルートがないなら作ればいいじゃない。そんな感じで書いています。
101021
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