雪が深々と音もなく降り続ける。カントーには雪がもうほとんど降らなかったから、きっと名前が来たらびっくりして、寒いなんて縮こまってしまうのだろうね。
この僕にはもう雪の冷たさがよくわからない。感覚が麻痺しているのか知らないけれど。

強さとはどこまで行けば止まるのだろうか。
強くなりたくて僕はただひたすら闘ってきた。
僕の目指すべき場所はなんなのだろう、あの場所にいても、僕には焦りしか生まれなかった。

みんな、僕とは違う空間の人間だったから、みんな僕の気持ちなんかわかってくれなかった。この言い表せない焦燥感も。

僕はなぜこうなってしまったのだろう。

不意に、肺がふるえた。

名前に、逢いたい。逢いたい。逢いたい。

胸を苦しさが占拠して、僕は涙が出てきた。
今まで、泣いたことなんて無かったのに。

名前はいつだって近くにいてくれたのに、僕のことを好きと言ってくれたのに、
彼女がいると僕の中に何かが生まれて弱くなってしまいそうで、僕があの子を断ち切ったのに。
僕は名前の花のような綻ぶ笑顔が好きだった。将来は僕とグリーンと3人で最強のトレーナーになると、すこし矛盾したことを自慢げに言うあの子が僕は好きだった。
その中でも僕が一番だというと名前は笑って頷いた。
名前と一緒にいると時が経つのを忘れるくらい、しあわせで、それまでにしていたバトルの時間やポケモンとふれあう時間も減っていった。
そうして僕はひとりになるとでたまらない焦りを覚えた。

名前がいると一緒にいたくなる。だけれどもどんどん、最強が遠ざかる。名前が傍にいれば僕は名前をダメにするし、僕はダメになってしまう。

後々わかったんだけど僕は結構依存する質で、過保護だったからそうゆうのも、原因だったのかも。

どんどんダメになっていく自分に恐怖すら覚えた僕は、名前を拒絶した。

その時の僕はそうすることで自分を守ったと思っていたのだけれど、結局苦しくなって僕は更にひたすらバトルに走った。

僕はただひたすらバトルに依存するようになっていた。


その果てには、何もなかったのに。



今が、その結果だ。


どのくらい時がたっただろう、長いこと考え事をし続けたというのに雪はまだ降り続けている。

僕の肩に乗るピカチュウが悲しげに鳴いた。
ピカチュウも、名前に会いたかったのかな、


「ごめんよ」


喉が渇いて痛い。ひぅと音が鳴った。

チャンピオンは生き急ぐなと言ったけれど。僕は早死にする運命なのだろうから仕方なかったんだよね。


さっきから実のところを言うと身体が暖かい。涙の痕がひりひりしていたがそれももう無い。

体が温かいのに、心がまだこんなにも寂しくて冷たい。

名前を忘れるようにバトルに熱中したのだけれど結局僕は忘れられなかったのだ。

バトルだけを追い続けた結果、僕には手持ちのポケモンたちいがいにはもう、何も残っていない。


今頃名前は何をしているんだろう。僕が拒絶したら泣いてた。グリーンからは塞ぎ込んでいる、おまえのせいだ、なんて散々怒られた。グリーンは名前のことが好きだったから、今は二人とも仲良く幸せにしているのかもしれない。
名前もいつまでも僕を想ってもくれなくてもそうしたほうがいいんだ。

すると、僕は独りきりだ。
仲間が、ピカチュウたちがいるけれど、


僕は世界でたったひとりぼっちだ。

寂しくて寒くて、孤独だ。さびしくてさびしくて、
息をするのが、苦しい。


せっかく雪が、やんだのに。


いつの間にか倒れ込んでいたらしい。青い空を見上げた。


「僕も愛してると言えばよかった。」

自分の気持ちに素直になればよかった。感情を押し殺さなければよかった。


「名前、」


「名前、」



     「名前」


声がかすれて、痛くて、吐息のような声だったけど、あふれる涙とこの叫びは止まらなかった。


「好きだったよ」




「大好きだったよ」




「愛してるよ」


僕の心の中でキミはずっと昔のいとおしい姿で在り続ける。


こんなに苦しいんだから僕がいなくなっても、せめてこの想いがあったことくらいは、生きた証として在り続ければいいのに。




恋しくて

消せない想い。



fin



恋しくて/UVERworld







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