私は今、長い時間をかけて阿呆みたいに頭を抱えている。

『離乳食、離れる乳の食』

先日、託児所に行った際に保育士さんから「離乳食は始めましたか?」と聞かれ、初めてその存在を知った私は馬鹿だ。

『こんなもんかな』

お粥を薄く薄くしたものと白身の魚、その他は野菜と果物を少し用意した。これらは全てネット検索を駆使し作ってみたのだが味をみるのはミナト君なわけだから大変心配である。

『いざっ』

先日、初めての離乳食だと気合いを入れて買った小さな陶器のスプーンを握りしめる。買う際に店員さんを二時間も付き合わせた挙げ句、色違いのセットで十本も買ったのは秘密だ。

『ミナト君、お口を開けてくださーい』

頑なに閉じられた口を開けようと少し突いてみる。

『いつもは口を開けるのにこんな時だけ嫌な顔をするとは』

ぶー、と言いながら口を閉じるミナト君にとても困った。せっかく買ったスプーンが使えないとは悲しいものだと思うが、まだ数ヶ月の赤ん坊に大人の思いは簡単に届かないのは当たり前だ。

『ちょっと、ごめんよ』

ぽかーんと開いた小さな隙間に、ほんの少しの量の離乳食を入れてみる。自然と入っていくそれを、ゆっくり、ごくんと飲み込んだ。

んーー、むーっ!

きゃっきゃと笑顔を見せたミナト君に一安心と思うが、また次の離乳食をスプーンに掬うと口へ運ぶ。気が変わらないうちに少しずつ食べさせなければ慣れることはないと思い焦る。

それからゆっくりゆっくりゆっくりと時間をかけて食べさせ、ほんの少しの離乳食はすぐに終わった。

『っしゃあ!』

天高くスプーンを上げ、初めての離乳食は終わった。



ミナト:0歳
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