果てなく飛び交う音色を紡ぐ者


「久しぶりですねーー切り捨てるんですか?全て」

フィレア達にそろそろ退場しようかと言い、言葉通り塔の外に出たクナイは誰かにそう聞いた。

「僕は何も口出ししませんよ。君が何をしても邪魔するつもりもない。君が何をしようとも、僕は君の味方ですから。ただーー‥‥」

クナイは誰かを見つめ、

「君が僕より先に死のうとするのなら、止めには入りますけどね。まあ‥‥心配はないと思っています。過去の残骸、未来への布石‥‥君の周囲には様々な人が集まりました。それに、君は僕を殺したいはずだ。ならば、そう簡単には死ねないでしょう?」

それだけを言い、誰かの前から転移魔術で姿を消した。


◆◆◆◆◆

クリュミケール達は最上階を目指し、再び長い螺旋階段を駆け上がっている。その時、

「みっ‥‥皆‥‥!」

突如、背後から誰かに呼ばれ、

「ラズ!?」

フィレアが彼の姿を確認し、驚くように名前を呼んだ。
ラズはフラフラとしながらも螺旋階段をゆっくり駆け上がってくる。よく見ると、彼は脇腹を押さえ、そこからダラダラと血が流れているではないか。

「ラズ‥‥!大丈夫か!?何があったんだ!?」

クリュミケールは慌てて彼に駆け寄り、

「ハトネは‥‥!?」

キャンドルは彼女の姿がないことに気づき、そう聞いた。

「くっ‥‥」

ラズは悔しそうに目を細め、

「すまない‥‥守ると約束したのに‥‥!サジャエルが現れて‥‥連れ去られてしまった‥‥守れなかった‥‥っ」

涙を滲ませながら苦しげにそう言う。

「思った通りか‥‥」

クリュミケールはギュッと目を閉じ、

「なら、急ごう!ハトネさんを助けに行こう!」

アドルが言った。
フィレアはふらつくラズに肩を貸してやる。

「ごめん‥‥本当に‥‥」

ラズが謝ると、

「何を言ってるのよ、こんな怪我して」

フィレアがラズに微笑み、

「そんなになってまで、ハトネを守ろうとしてくれたんだろ?遅かれ早かれ、誰が残ってもこうなっていたかもしれないんだ」

クリュミケールが優しく言い、

「もし俺が残ってたら‥‥もっとヤバイことになってたかもな」

キャンドルは苦笑いをした。


◆◆◆◆◆

「創造神‥‥否ーー今はハトネ、でしたか?」

サジャエルは微笑みながら、不安げに立ち尽くす彼女を見る。

「さっ‥‥サジャエルさん‥‥!なんなの?どうして私を‥‥」
「ーーあなたは誰です?自分が何者か覚えていますか?」

そんなことを聞かれて、ハトネは首を傾げた。

「‥‥どうして忘れていたのでしょうね。あなたのことを。しかし、スノウライナ大陸であなたは無意識に力を取り戻した。完全ではないけれど、だからこそあなたの存在を感じた。ふふ‥‥これで、世界を滅ぼす手間は省けますね。その後で、リオラに世界を創造させれば良い‥‥」

サジャエルはケタケタと笑う。

(な‥‥に?)

ハトネは震えて彼女を見据えるしかできない。

「無様ですね、創造神。ああ‥‥なんと情けない姿になってしまったのですか。あなたさえ昔のままのあなたで居たならば‥‥私はこのままの世界を赦したと言うのに‥‥あなたは‥‥落ちぶれた神。何も出来ない無能な神」

サジャエルは嘆くように言い、

「【果てなく飛び交う音色を紡ぐ者】よ。世界の創造神ーーかつての我が盟友よ。さあーー世界崩壊の為、死になさい。あなたの贖罪ですよ、かつて世界を守れなかったあなたの命で、償いなさい」

両手に光輝く魔術が灯る。その光景にハトネは更に震え、

「い‥‥やっ‥‥皆ーー!助けて‥‥!ラズ君っ!フィレアさん!カシルさん!シュイアさん!アドル君!キャンドルさん!クリュミケール君ーー!」

ギュッと目を閉じ、仲間達の名前を叫んだ。
サジャエルの両手から魔術の閃光が放たれ、弓矢のようにハトネに襲い掛かる。
ハトネに、地面に魔術の閃光は突き刺さり、ドンドンドンドンッーー!と、激しい音を立て、やがて爆風が巻き起こり、辺り一面に煙が立ちこめた。

サジャエルは乾いた笑みをたたえ、しかし煙が立ち退いていくと、驚くように目を見開かせる。

確かに、無防備なハトネに向かい魔術を放った。直撃した。ハトネは避けることはしなかった、できなかった。

ーーそれなのに。

目の前には、ハトネが立っている。それも、無傷で。
彼女は目を閉じたまま、

「久しいな、サジャエル。と言っても‥‥お前とこのハトネは何度か会っていたがな‥‥それすらも今になって思い出すとは、愚かなり、女神【道を開く者】。狂いに狂ったか」

そう言いながらゆっくり目を開けると、茶の瞳は射抜くような鋭さを帯びていて‥‥

「まさか‥‥創造神!?目覚めたというのですか!」

サジャエルはハトネを睨みながら叫んだ。

「我らはかつて間違った。もはや、神など世界に必要ないのだ。私も、お前たち女神も‥‥終わりにするぞ、サジャエル。私が邪魔ならば殺すがいい。お前も道連れだ」
「ふっ‥‥あははは。何を。あなたが死ねば、世界は」
「滅びる。だが、すぐにどうこうというわけではない。私が死んでも【見届ける者】がいるのだから」

そんなハトネの言葉にサジャエルはニヤリと笑い、

「くくっ‥‥そう【見届ける者】ーーあなたの大切な器も死ぬのですよ!?リオ‥‥クリュミケール。大切なのでしょう?」

それにハトネは目を閉じ、

「奴を大切に想っていたのはハトネだ。私は創造神ーー遥か遠き時代のこの今、我らは罪を償うのだ」

しかし、サジャエルはニヤニヤと笑い、

「ならばあなただけが無駄死にすればいいーー!完全ではない今のあなたを滅し、世界が滅びきる前にリオラを目覚めさせ、新たな世界を創造させましょう!」

そう叫んですぐ、ハトネに向かって右腕を伸ばしーー‥‥。


◆◆◆◆◆

クリュミケール達は螺旋階段を駆け上がり続けた。しかし、アドルが「えっ!?」と、大きな声を出し、

「あれは何!?」

と、頭上を指差す。見上げた先には、黒い霧のようなものが渦巻いていた。

「‥‥世界の、破滅」

ぼそりとレムズが言い、

「なっ、何か見えたの?」

カルトルートが彼に尋ねるが、レムズは首を横に振る。

「とにかく急ごうぜ‥‥!」

キャンドルが言い、一行は再び足を進めた。螺旋階段が終わり、再び広いホールが広がる。
そのホール全体に、先ほど見上げた黒い霧が渦巻いていて‥‥

その光景に、クリュミケールはゆっくりと、息を呑んだ。

ーーそこには、右手を真っ赤な血で濡らし、不適な笑みを浮かべて立ち尽くすサジャエルがいる。
そして、彼女の足元には、胸から多量の血を流し、地面にうつ伏せに倒れているハトネの姿があった。

「えっ‥‥?ハトネ、ちゃん?」
「‥‥っ!」

フィレアが放心混じりに彼女の名前を口にし、フィレアの肩を借りたままのラズは目を見開かせる。

そして、ぐるんとサジャエルは体をハトネに向けたまま、顔だけを一同に向け、

「ふふふ、はははは!創造神は死にました‥‥!人間共よーー!この意味がわかるか!?後は破滅を待つが良い!自らが滅びるその瞬間をーー!ははっ、ははは‥‥」

女神【道を開く者】は狂ったように笑い続け、

「さあ‥‥悠長にしていられない。滅びる前に、リオラを目覚めさせようじゃないか‥‥」

そう言って笑い、この場から姿を消す。確かにイラホーは、こんな結末を示唆していた。

『もし創造神が見つかってしまえば‥‥その子がそうなのだとしたら‥‥真っ先に狙われる。だって、創造神を殺せば、回りくどい段取りを踏まずに世界は滅びるもの。滅びて‥‥そうしたら‥‥【見届ける者】は世界を創造せざるを得ない。サジャエルの、思惑通り‥‥』

そう、話していた。それなのにーー‥‥
うつ伏せに倒れ、動かないハトネの傍にクリュミケールは足を動かす。
彼女の側に膝を落とし、ゆっくりと彼女の体を持ち上げて仰向けにさせた。

「‥‥ハトネ!」

胸から血を流し、眠るように目を閉じたままの彼女の名前を呼び、肩を揺さぶる。しかし、彼女は目を開かない。息はーー‥‥している。

「ハトネちゃん‥‥!」

フィレアもハトネの側に駆け寄り、

「ハトネ‥‥!」

僅かな時間であったが、彼女と接したキャンドルも走った。
すると、うっすらとハトネの目が開き、

「‥‥ふふ‥‥ハトネ、か。お前達の知るハトネは‥‥もう、いない」

そう、ハトネの口から言われて、

「私は、創造神。遥か遠い未来に転移し、いつしかお前と会った私だ‥‥」

彼女は苦し気に言葉を続け、クリュミケールを見つめる。
すっ‥‥と、レムズがハトネの傍に寄り、彼女の胸に手を翳し、回復魔術を唱えた‥‥が、血は止まらないし、傷口は塞がらない。

「とっくに‥‥私の体は弱体化していた‥‥創造神である私は‥‥ただの人間となり、今こうして‥‥神としての意思を取り戻したが‥‥意思だけで、体はただの‥‥小娘だ。わかるだろう‥‥核を潰されれば、人は、死ぬ‥‥」

ハトネはそう言いながら血溜まりの胸元に手を触れ、うっすら微笑む。

「‥‥時間がない。お前達に、真実を委ねたい‥‥私は創造神。【果てなく飛び交う音色を紡ぐ者】。かつて‥‥多くの贄のもと、世界を保ってきた‥‥」

語り出そうとするハトネに、

「はっ‥‥ハトネちゃん‥‥もうっ‥‥喋らない方が‥‥」

フィレアは彼女の冷たくなっていく手に触れながら言うが、彼女は瞬きを一度し、

「人間の子よ‥‥今は、静かに聞いてくれ」

静かに、諌めるようにそう言われ、フィレアも、クリュミケール達も何も言えなくなる。
そんな彼女達の様子にハトネは口を開き、

「かつて、妖精という種族がいた‥‥彼らの王は、妖精王ザメシアと言った‥‥ザメシアは自在に生きることができる。子供にも、大人にも‥‥何にでもなれる体になった‥‥そうーー不老とはまた違う、不死者となった‥‥ザメシアはサジャエルと同じく、世界崩壊を望んだ‥‥ただ違うのは、サジャエルは新しい世界を創ろうとしている。だが、ザメシアは世界を壊し‥‥そのまま新しい世界も何も無いまま、完全なる世界の滅亡を望んでいる‥‥」

ハトネはごほごほと咳をし、

「‥‥だからザメシアは、世界を保つ神である私を邪魔者とし、滅しようとした‥‥しかし、サジャエルが‥‥人気の少ない召喚の村に‥‥水晶の中に私を封印した‥‥私を、守るために。そのことすら、サジャエルは忘れているが‥‥」

その言葉に、クリュミケールもシュイアもカシルもようやく封印されていた神の理由を理解した。
そして、ハトネはゆっくりとシュイアとカシルを見つめ、

「あの日‥‥私の封印は解けた。サジャエルは私を滅しようとした。あの日までの彼女は‥‥まだ世界の創造を考えてはいなかった。クリュミケール‥‥お前という【見届ける者】に出会い、私を殺して自分だけの世界を創造すればいいと考えたのだろうが‥‥もはや、サジャエルの思考は‥‥滅茶苦茶だ‥‥自分で言動をコントロールできていない‥‥水晶の中で無意識に私はサジャエルに抵抗し、魔術を放ち目覚めた。恐らくその時に、シュイア、カシルーーお前たち二人に魔術の力を与えてしまったのだろう‥‥」

そして、あの水晶は生き物を封印する為のものでもあるが、創造神の魔力を外に放出する仕組みになっていたそうだ。放出された神の魔力が召喚の村の人々に魔術の力を与えていたと話す。

「あの水晶は、【紅の魔術師】という狂った男がかつて作ったものだ‥‥サジャエルも急いだのだろう‥‥ザメシアから私を、守るために‥‥あの水晶を持ち出し、私の身を守った‥‥しかし、私の中から魔力は失われ‥‥微弱な魔力しか‥‥残らなかった‥‥そう、今も、だ。そして‥‥目覚めた私は‥‥とうとう魔力を保てなくなり‥‥記憶も喪い‥‥ただの、人間の少女に、成り下がった‥‥」

それが、クリュミケール達のよく知るハトネなのだと。その真実に、一同は沈黙した。

「微弱ながら‥‥こうして、創造神として‥‥最期を語るほどには、魔力を取り戻せた‥‥かつては友であったサジャエル。サジャエルもザメシアも‥‥元を辿れば、私のせいで狂わざるを得なかった‥‥だからこそ‥‥私はサジャエルの殺意を、受け止めた‥‥」

ハトネは嘆くように言い、再び咳き込んでしまう。

「くっ‥‥ここまで‥‥か。全てを語れなかったが‥‥私が消えた瞬間、世界は崩壊へと進み出す‥‥だが、僅かな猶予があるはずだ‥‥」

ハトネはクリュミケールの腕を掴み、

「【見届ける者】よ‥‥お前か、お前の力をよく知るリオラがやるんだ。お前たち二人のどちらかが‥‥この崩壊を、食い止めるんだ‥‥」

言われて、クリュミケールは目を細めた。
確かに、何度も何度もそれは聞いた。
【見届ける者】は世界を生かすことも殺すことも出来る存在なのだと。
それが、どんな力なのかはわからない。やり方だって、わからない。
だが、クリュミケールは頷いた。頷いて、ハトネを見つめた。
そんな二人の姿を見つめ、フィレアは両手で顔を覆い、泣き始める。
もう、無理なのだと‥‥ハトネは、助からないのだと、察したのだろう。
キャンドルも、かつて実の妹を看取った瞬間を思い出し、唇を噛み締めた。

「ーーハトネ」

クリュミケールは穏やかな声で彼女の名前を呼ぶ。ハトネと呼ばれた神は、

「お前達の知るハトネは‥‥もう、消えた‥‥」

そう、無機質な声で言う。

「君は【ハトネ】だ。オレ達の仲間であり、友であるハトネ。君はいつだってオレを見捨てなかった‥‥いつだって傍に居てくれた。最初は、君のこと、意味がわからなくて、何を言っているのかわからなかった‥‥でも、オレがそんな態度でも、それでも君はここにいた。そんな君だから、オレは君を独りにしないと誓い‥‥諦めない君だから‥‥オレは君を友だと思えた」

ハトネの手を握り、クリュミケールは微笑んでそう伝えた。

「ーーっ!!そうよ‥‥っ!あなたはハトネちゃん‥‥!私にもわかる!優しくて元気で、諦めの悪い子‥‥でもっ、まっすぐな女の子‥‥だから‥‥っ、今も、諦めないでよ‥‥サジャエルの殺意を受け止めたって、何よ!勝手に、死なないでよ‥‥なんで、諦めたのよ‥‥消えないでよ‥‥ハトネちゃん‥‥」

フィレアはぼろぼろと涙をこぼし続け、彼女の頬を両手で包む。
あたたかな温もりが、あたたかな雫が、ハトネの肌に伝っていく。

ハトネは、自分の側に膝を落とすクリュミケールを、フィレアを、キャンドルを見つめた。
それから、状況に感化されたのか、泣いているアドルとカルトルート、静かにこちらを見つめるシュイア、カシル、レムズ、リウス‥‥そして、俯き、表情を窺えないラズを順番に目で追い、

「‥‥お前達のような人間に出会えて‥‥ハトネは、幸せ‥‥だったのだな‥‥すまない‥‥世界を、お前達に託してしまって‥‥こんな形で、逃げて‥‥本当に、すまない‥‥サジャエルを‥‥そしてもし、ザメシアに出会うことがあれば‥‥どうか‥‥二人を‥‥止めてくれ‥‥救って、くれ」

ゆっくりと目を閉じ、数秒の沈黙の末‥‥

「『ありが、とう‥‥私は‥‥皆が‥‥大好き、だ‥‥よ』」

ぎこちなく、途切れ途切れに、創造神はハトネを演じるようにーー‥‥

だらんと、動かなくなった彼女を、クリュミケールは強く抱き締めた。

「ーーっぁああああああ‥‥!」

フィレアは声を上げ、泣いた。

クリュミケールの腕から、ハトネの姿が薄れ行き、消えていく。
神だから、なのだろうか。
亡骸すら残さず、ハトネは消え去った。


ーークリュミケールは強く拳を握り締め、ゆっくりと立ち上がる。
フィレアもキャンドルも涙を拭いながら立ち上がり、

「‥‥これ以上‥‥サジャエルの思い通りにさせてはいけないわ‥‥こんな、こんなっ‥‥」

嗚咽混じりにフィレアが言えば、

「そっ‥‥そうだよね。残された時間は、僅かなんだよね」

カルトルートが頷いた。

「でもっ、でもっ‥‥こんな終わりって、ないよ‥‥おれ、ハトネさんとまだ、ちょっとしか、話したことないのに‥‥」

溢れてくる涙を何度も拭い、アドルは言う。

「‥‥辛いけど、今は、行こう‥‥ハトネさんは、自分のせいで世界が終わることなんて、望んでないよ‥‥!」

凛とした、真っ直ぐな金の目でラズが言えば、

「っ‥‥そう、だな‥‥ハトネの為にも、世界を、守んなきゃいけねーんだよな」

鼻を啜りながらキャンドルが同意して、消化しきれない思いを抱えながらも、一行はあと僅かな螺旋階段を見上げる。
頂上まで、あと少しだ。

クリュミケールはもう一度だけ、ハトネが消えた場所に振り返る。すると、ぽんっ‥‥と、頭の上に誰かの手が置かれた。シュイアの手だった。
彼はすぐにクリュミケールの頭から手を離し、螺旋階段へと進んで行く。

「‥‥シュイアさん」

ぽつりと、クリュミケールは彼の背中を見つめながら呟き、数秒だったが、頭に置かれたよく知っている手の温もりに、泣きそうになってしまう。
昔から、シュイアはそうだった。
下手な慰めの言葉は寄越さない。

ただ‥‥何も言わず、居てくれた。

(ハトネ‥‥)

クリュミケールは心の中で彼女の名前を呼ぶ。

『やっと会えた‥‥!』

十二年前の、彼女の第一声と、嬉しそうな、泣きそうなあの表情が浮かんだ。
だが‥‥今は振り返っている暇はない。

ーー誰かが背中を押してくれたような気がして、クリュミケールは重たい足を動かした。


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