上級天使マシュリ

「そうか…あのモルモット、上級天使になったか…」

私はそう呟きながら、その報告を持って来たミルダくんを見た。

「ああ。天長が何をお考えなのか、はたまたカーラが絡んでいるのかは知らんがな。恐らくは、厄介な事が起きるだろう」
「……どうかな。見た所、あのモルモット、害は無さげだよね。力はあるが、何より自信を持っていない。それが決め手だ。我々がモルモットの自信を奪い続ける限り、あのモルモットは永遠に弱いモルモットのままだろう」

私がそう言えば、ミルダくんは眉間に皺を寄せたままで、

「だが、問題はカーラだ。あの愚か者は、あの異分子を人扱いする。そう、生かしている。それを、天長も許している…」
「でも、モルモットのお陰でカーラも真面目になったから良かったんじゃないかな?ちゃんと仕事もしてくれるし、以前よりはだらしなくなくなったし、ちゃんと、トップクラスとしての自覚を……」

そんな私の言葉の最中に、ミルダくんは大きなため息を吐いた。

「カーラが真面目?はっ、笑えるな。まあ、確かに変わったが、ますます悪い意味で、だ。奴が自身の任を全うするのは、天長の為ではない。全てはあの異分子が天界で暮らしていける為だ」
「ふむ。まあ、それは私もわかってるよ」

カーラが真面目に上級天使の仕事をし続ければ。
上級天使の中で、カーラとミルダくんの二人が恐らく優秀なのだ。
だから、優秀であり続ける限り、誰も文句は言えないし、天長からの信頼も強まる。

と言うことは、あのモルモット……、ハルミナの件も、恐らくカーラが何か融通を利かせてもらっているのだろう。

ふと、私は下らないことを考えた。

「ところでミルダくん」
「何だ」
「カーラは実際、あのモルモットに対してどんな感情を抱いているのだろう?あの不真面目カーラを真面目にしてしまうぐらいの…」

そんな私の下らない質問を、ミルダくんはそれこそ下らない、と、鼻で笑い、

「俺達の知ったことではない。あの異分子は、堕天使だ。俺は、あんな存在を、天界の住人などと認めはしない」

そう言って、ミルダくんは去っていった。

しかし、モルモットが上級天使か。

天長は、何か新しい実験でもお考えなのかな?

それとも、カーラが何かに気付いて先手を打ったとか?

まあ、確信はない。今はまだ、私達がどうこうすべきことでも……

「マシュリ先輩ー!」

背後から掛けられた声に、私は振り向く。
それはもう、今までの真面目面ではなく、気さくな笑顔を作って。

「やあ、マグロくんじゃないか。お疲れ様、任務かい?」

同じく、上級天使であり、後輩であり、私より少し年下で、一番若手のマグロくん。

はっきり言って、別に興味はない。
しかし、後輩には優しくしろ、後輩には好かれろと言うだろう?
ミルダくんにはそれが出来ないから、代わりに私はそうしてるよ。

信頼された方が、後々、都合がいいし、使い易いし、ね。


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