NARUTO…週刊少年ジャンプで連載している人気漫画…漫画に興味がなくても誰もが名前を聞いた事がある漫画…。



私はそんな漫画の世界にいる。
正直、こういった現象は初めてでは無く、前はジョジョの奇妙な冒険の吉良吉影という人物に成り代わっていた。
その吉良吉影という奴は原作では殺人鬼として主人公達と敵対していたが、私には彼が持っている殺人衝動とやらは一切無く、殺人なんて犯したことも無い。善良な何処にでもいるようなサラリーマンだった。姿形は吉良吉影その物だが似てもにつかない存在。しかし、ストレスが溜まると爪がビキビキと伸びる処だけは酷似している。
そして、考え方もある一つの点に置いては、彼とは同じだ。
『平穏に生活』する事。そこだけは彼と同じであり、これからもこの考え方を変えることは無い。
しかし、些かこの世界では私の望む生活を送ることは叶わないようだ。いくら避けても、どっちにしろ物語に巻き込まれるのは確かだからである。
だから、私はこう考える。なるべく目立たず、忍びらしく忍び。自分の身を守る力を保持する事。例え、ラスボスと相対したとしても、ある程度、戦える力を持つ…それが今の私の目標である。
しかし、疑問に思った事が一つある。
何故かこの世界でも、私は前世と同じ吉良吉影という名であり、姿だからである。
これが吉と出るか凶と出るかは、この先に進まない限り分からないことだが…。
嫌な予感しかしない。


*



現在、この吉良吉影はアカデミー生として過ごしている。勿論、姿形が吉良吉影でも、年齢は若返っている…。正直、小学校をもう一度、受け直している気分だ。そのため、座学は非常に簡単で、狙って3位を取ることは造作も無い事だ。しかし、小学校とは違う点があるとすれば忍術や体術…人の殺し方等を学ぶ処であろうか…。
そんなこんなで、私は周りにいる煩いガキどもに合わせつつ、誰にも嫉妬されるようなことも無く、穏やかに学生生活を過ごしていた。
「吉影、何時も本当に助かるよ。お前みたいな生徒が居てくれて…本当に良かった。」
そう疲れ切った顔で力無く笑うイルカ先生を見て非常に哀れな気持ちになった。
彼の両手は資料であろう紙束で空いておらず、非常に大変そうだったので助けたのだ。
にしても、私の担任でもあるイルカ先生が受け持つクラスは問題児であるうずまきナルトやらその他多勢おり、非常に手を焼いているのは誰の目から見ても明白だ。しかし、将来、木の葉を担う忍びになるとは誰が思うだろうか。
「ありがとうございます。それにしても、この箱に入っている物は何ですか?」
そう私がイルカ先生に頼まれて持っている箱について尋ねるとイルカ先生は周りを見回して、ニヤリと笑いわざとらしく耳元で呟いた。
「三日後に行なわれる卒業試験の時に配る物だ。こう言えば、吉影は頭が良いから何かは分かるだろ?」
そうイルカ先生に言われて思い付く物は一つ。
額当ての事だろう。
「額当てですか…?」
「あぁ、当たりだ。卒業試験に合格し忍者とし認められた者だけに与えられる物だ。やっと、届いてな。前回は試験直前に来て大慌てだったんだ。今回は丁度良い時に来て、ホッとしてるよ。」
そう言って、イルカ先生は大きく溜息をついた。
やはり、アカデミーの先生も色々と雑務で大変なのだろうか。ある程度、忍者としてのキャリアを積んだら、アカデミーの講師にでもなろうと思ったが保留にしておこう。
「ハハッ…良かったですね。それにしても、卒業試験ですか…。」
卒業試験に出される術はシカマルの情報によれば、毎回、分身の術だそうだ。あんな簡単な術につまづく筈は無いが確認がてらに一回だけ帰ったらやっておこう。いや、そもそも影分身の術が出来るから問題無いか。
「吉影、心配する事は無いぞ!お前の実力なら絶対に合格出来るだろう。この俺が保証する。」
私が試験に対して不安なのだろうと思ったイルカ先生はそう胸を張って言った。
私が不安なのは試験の後の班決めだ。
絶対に例の第七班にはなりたくない。なるなら、シカマルのいるアスマ班が良い。

そう思いながら、額当ての入った箱をイルカ先生と色々と話ながら運んでいた。

*


突然だが、私の前世についてお話をしようと思う。


原作の漫画では私の配役は殺人鬼であり、主人公が倒すべきラスボスのような存在だったが、私はそうじゃあ無い。
私は何処にでもいるような善良なサラリーマンであって、人殺しとか悪い事は何一つしてないし寧ろ、捨てられた猫達を引き取ったり、ボランティアとか良い事を沢山していたと思う。
なのにだ…私は死んだ!
交通事故でだ!それも人を救うためにある筈の救急車に轢かれて!!
死んだ後、なんと原作で私が殺す筈だった幽霊の少女とその犬に同情され、慰められたのだ。
畜生!私は慎ましやかな優しい女性と結婚して子供を作って、その子供や孫に見守られて死にたかったのにッ…!
今度こそ、平穏な生活をッ!真面な死に方をしたいッ!そう思いながら、旅立ち、ついた先が、この世界…NARUTOの世界だった。
フハハハハッ…神よ。ふざけているのか。この死亡フラグがオンパレードの世界でどう生きろとッ!?
どう足掻いても、ペイン襲来やら木の葉崩しに巻き込まれるじゃないか!そもそも、うずまきナルトと同期生な時点で私の求める平穏な生活は遠のいているにッ!
神がいるなら、私のスタンドであるキラークイーンで爆死させたいと常々思っている。
見つけ次第、殺そう。
そもそも、この里での私の立場は非常に面倒臭い物なのだ。強いて言うなら、うちはサスケやうずまきナルトと似たような立場なのは確かだ。





*




「この部屋が例の城星一族の血を引いた子のですか…。」
そう尋ねるはたけカカシと三代目火影の目の前に広がるのは、綺麗に整頓された部屋で、埃ひとつ無く、まるでモデルルームのようでもあったが、ちゃんと生活感があり、この部屋に住む人間の性格が現れていた。
「うむ、唯一、あの事件の時に生き残った子じゃ。物分りの良い子でのう。今は身を守るために、父方の苗字で名乗らせている。」
「そうですか…。」
城星一族…戦国時代、あの最強と謳われたうちはと千手と肩を並べた存在して有名な一族であり、木の葉の里の創設に関わった一族でもある。
彼らは忍術ではなく、仙術を極めた一族として有名だった。その中でも、波紋と幽波紋と呼ばれる存在は多くの忍び達が今でも畏怖している。何故ならば、幽波紋や波紋には忍術やそう言った物は通用しないのだ。チャクラとは全く異なった生命エネルギーを使用し戦っている。
そのため、死んだ後にその人間の体を幾ら弄ろうと情報は全く得られない。
それに、一部の人間にしか幽波紋の姿は見えず、幽波紋の能力も人それぞれで不明瞭であり、ある者は時を止めたり、ある者は次元を超える事が出来たりしたそうだ。
それゆえ、人々は彼ら血族を恐れ、彼らの力を得ようとする者や殺そうとする者は後を絶たない。今現在、唯一の生き残りである吉良吉影…彼もまた火影様によれば、誘拐やら何度も殺されかけたりしたそうだ。
カカシは彼のアカデミーの成績表をみつつ、溜息をついた。全ての項目が3位…授業態度も良く、体調不良の時以外、休んだ事は無し…成績表だけを見ればバランスの取れた極々平凡な生徒…だが、彼はあの城星一族の人間。
本来なら1位を取る事は簡単なんだろうが、ワザと成績を3位に揃え、目立たないようにしている可能性が高い。
社会での自分の立場をわきまえ、なるべく、嫉妬されないよう、目立たないように彼は生活している。同じ班の人間になるうずまきナルトやうちはサスケとは真逆の人間だ。
正直、子供の対応だとは思えない。
恐らく彼の境遇では子供でいる事は許されなかったんだろう。あの二人よりは幾分かはマシだが、大変な事になりそうだ。
そう思いながら、カカシは火影と共に彼の家を去った。



*



卒業試験を終え無事に合格した次の日、班決めのため合格者だけ教室に集められているのだが…。
何と言うか…その…ね?男同士のキスを生で見るとやはり鳥肌が立って本当にもう…間近で直視てしまった私はもう…うずまきナルトォとうちはサスケェ…腐女子の餌食になれ…。
「朝っぱらから、変なもんを見せやがって…アイツら…ったく、めんどくせぇ…。」
隣で何時も通り気怠そうに呟くのは、私にとって唯一無にの親友である奈良シカマルだ。彼は私の気持ちを唯一、同期生の中で察してくれる良き理解者だ。私が城星一族の人間だと知っている人でもある。
「全くだ…直視してしまった私は…心の平穏が…。」
「安心しろ…俺も見ちまったから…。」
そう他愛も無い会話をシカマルとしながら過ごしていると、イルカ先生が教室に入ってきた。騒がしかった教室内は静かになり、イルカ先生は班決め等についてを語り始めた。
スリーマンセル…しかし、今期の卒業生は1人多いので一組だけフォーマンセルになると言っていた。
「正直、うずまきナルトとうちはサスケと同じ班になるのだけは絶対に嫌だ。」
「分かるぜー。アイツ等と同じ班になったら、物凄くめんどくせぇ事になりそうだからな。」
そう二人で苦笑いしていると、イルカ先生が淡々とリストに書いてある班と名前を読み上げて行く。
まだ私の名前は読み上げられていない。シカマルと同じ班では無いなら、何処かのモブ班に入りたい。
第七班には絶対になりたくない。命が幾つあっても足りないさッ!
「じゃ次七班、春野サクラ・・・うずまきナルト!それとうちはサスケ…そして…。」
うん?!イルカ先生!どうして私をチラッと見た?私の顔に何か付いてるのかな?
何で、すまないって感じの顔で私を見るのかな?イルカ先生の口元が何故かゆっくりスローに見えて行く。ま、まさか、お、おい!
やめろォ!と口パクで私が叫んだ瞬間、「吉良吉影」そうイルカ先生の声が妙に耳の中まで響いた。
私はショックのあまり口をパクパクさせていると、シカマルに肩を叩かれ小声で「オイ!吉影!例のアレが出てんぞ!」とそう言われ我に返ると、キラークイーンが背後に心配そうな顔をして浮かんでいた。
まずい、精神的動揺した所為でキラークイーンを出してしまった。下手したら、教室の机を爆弾に変えてたかもしれない。
私はシカマルに肩を撫でられ、少し落ち着きを取り戻すと、スタンドを元に戻した。
にしても、シカマルよ…ッ!私を慰めないでくれ…ッ!その優しさが心に染みてもっと辛くなるぞッ!


それにしても…嗚呼、私はどうやら平穏に生活が出来ないらしい…。







※城星一族=ジョジョの奇妙な冒険のジョースター家。
※波紋=ジョジョに出てきた技。呼吸を使って力を溜める。
※幽波紋=スタンド。背後霊。その人の心の本質を表す物。



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