俺の親父はとても格好良くて自慢の父さんだ。


イタリア空軍のエースパイロットで、頭も良いし、息子の俺が言うのもなんだけど、顔も格好良い。俺にソックリな顔だけど、俺よりも凛々しくてシッカリしてると思う。
どうして、俺が女みたいな顔をしてるのか、親父に聞いた事があるけど、親父が言うに、俺は母さん似らしい。
小さい頃、その事を気にしてたら『有る程度、歳を取れば、嫌でも男らしくなるから安心しろ。』と言われ、力強く頭を撫でられた。親父の掌はゴツゴツしてて硬いけど、撫でられると何だか落ち着くんだよな。
後、親父は俺の事を馬鹿になんかしない。
俺が幾ら勉強が出来なくても怒らないし、急かす様な事も言わない。
だけど、本を読めとしつこく言って来る。
親父曰く、掛け算や割り算、足し算、引き算…それと読み書きが出来れば、大体は生きていけるそうだ。それを聞いてたブチャラティやフーゴの奴も苦笑いしつつ、頷いてた。
どうして、本が重要なのか聞くと、本の中にある知識を日常生活で使うかもしれないし、知識があれば応用も出来ると言われたけど、やっぱり本は好きじゃない。
けど、親父が俺のために北斗の拳の漫画を買って来てくれて、それは面白いから読んでる。
親父が俺に対して、馬鹿野郎!って大声で怒鳴る時は、俺自身ですら自覚出来るぐらい、馬鹿な事をした時だけだ。
それ以外の時は、怒らないし、ニコニコ笑ってる。
でも、流石に俺がギャングになると言い出した時は、ブチャラティと同時に怒ったけど、俺の覚悟が本当だと分かったら、普通に許可してくれた。
その時のフーゴとブチャラティの顔は面白かった。
後々、どうして許可してくれたか聞くと、親父も両親の反対を押し切って軍隊に入ったから強く言えないと苦笑いしてた。
俺の事を第一に考えてくれて、俺のやりたい事やしたい事を尊重してくれる。
そんな俺の大切で、優しい親父。
そう、俺の親父だ。
誰の物でもない、俺の…親父…なのに…。






「□△さん!」
ミラノの街中をふらりと歩いていると、凛とした聞き覚えのある声が後ろから聞こえて来た。
振り向くと、特徴的な穴空きスーツを着た少年が此方に、手を振って笑顔で駆け寄って来る。
パンナコッタ・フーゴ。俺の息子であるナランチャの上司であり、勉強を教えてくれている。大人ぶってはいるものの、年相応の反応を見せてとても良い子だ。
「おぉ!パニーか!久しぶりだな〜!元気にしてたか?後、背も少し伸びたか?」
つい癖で、ナランチャを撫でる時と同じ様に、頭を撫でたら、フーゴは耳や頬を真っ赤にさせ「えぇ、少し…」と呟いた。
「あの…□△さん…。」
「うん?どうした?パニー?」
「暇ならお茶でもしませんか?コッチが奢るので…。」
「ハハッ別に良いが、奢る必要なんか無いって、俺が奢るからさ。」
「でも…!」
「この話は終わりだ!俺が奢るから、何時もの喫茶店にでも行くか!」
「はい!」
そうフーゴは元気良く返事をすると、俺の隣に並んだ。
年齢の所為か、こうして見ると何だか自分の子供みたいだ。ナランチャの奴と歳が近いってのもあるだろうが…。にしても、この子は本当に色々と苦労して来たんだろうなぁ〜としみじみ思う。
最初の頃は、猫みたいにツンツン威嚇してきたけど、今思えば可愛いもんだな。
「ここ最近はどんな感じだ?ナランチャの奴が学校に行った所為で静かだろ。」
「ここ最近ですか…特に変わった様子もありませんね。確かに、ナランチャが居ない所為で妙に静かです…ナランチャはどうしてるんですか?」
「ナランチャの奴なら文句言いつつ、毎日、学校に行ってるよ。あっ!この前にあった算数のテストで100点取ったんだよ!苦手だった2桁の掛け算を克服してな!」
「えっ!100点!?あのナランチャがですかっ!?」
「そう!夜中まで起きて勉強を頑張った甲斐があってな。」
「そうだったんですか…ナランチャがテストで100点…!」
「うぅ…あの時の感動を思い出すだけで、今でも涙が出てくる。」
そうこう他愛もない話をしながら、歩いていると何時も贔屓にしている喫茶店の前に着く。
ドアをゆっくりと開くと、見慣れた店主と店員が歓迎して店の中へと案内してくれた。
席に着くと、店員がメニューを渡しながら、冗談交じりにこう言ってきた。
「おたくら二人は本当に仲の良い親子みたいですなぁ〜」
その言葉を聞いたフーゴはビクリと肩を震わせ、満更でもない嬉しそうな顔をしている。俺は苦笑いしつつ「どこが似てんだよ〜。髪の毛の色が全く違うだろ〜。」と流していた。
そんな時だった。
「俺の…親父だ…。」
ぼそりと何処からかそんな声が聞こえた。
フーゴの声でも無いし、店員の声でも無い…コレは…まさか…。
「フーゴの親父じゃねぇ…俺の親父だ!!!俺の!!父さん!!!フーゴ!!てめぇ!!俺の親父と何してんだよ!」
そう叫び飛び出して抱き付いて来たのは、ナランチャだった。何だか分からんが怒っている。と言うか、どうして此処にいる!?
「ナランチャ!!どうして此処にいるんだ!?学校はどうした?六限目の授業は無いのか?」
「今日は六限目は無い!!それよりも、親父!!どうしてフーゴと一緒に居るんだよ!!」
「たまたま会って、茶でも飲もうとしてたんだが…。」
「オイ…ナランチャ…てめぇ…、今すぐ□△さんから離れろ。」
そう言って、黒いオーラを出しながらフォークを構えるフーゴを見てもなお、ナランチャは俺にキツくしがみついて来る。
「何で離れなきゃいけねぇーんだよ!!俺の親父なんだし、幾ら引っ付いてたって良いだろ!!」
「この腐れ脳味噌がぁ〜!!コッチはお前みたいに、毎日、会ってる訳じゃねぇんだよ!!良いから離れろォーーー!!!」
そう叫んでナランチャにフォークを手に飛び掛かるフーゴ。
これ以上、騒ぎになったら、この店に通えなくなるッ!此処はCQCで止めなければ!
「2人とも落ち着け!って…この馬鹿野郎共がぁ!!」
そう叫んで、二人を思いっきり投げ飛ばした。


この後、テーブルと食器諸々破壊してしまい、弁償したのはまた別の話である。


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