星の光が霞んでしまう程に、この世界に蔓延る闇は深い。


だから、私は前世の世界で大切にしていた道徳心やら正義感はある程度は捨てた。
そんな物はギャングの世界では邪魔になるだけだし、自分が苦しむ原因になるからだ。
それに、今のパッショーネはまだ弱い。今現在は協定関係にあるアルバニア・ファミリーとの協力により、勢力を拡大している。
何故、アルバニア・ファミリーと協定が結べたかと言うと、彼らは売り物≠ナある女性や児童、薬を安全に欧州各国に運ぶためのルートを欲しがっていた。
アルバニアは検閲がキツイため、陸から流すことは出来ない。ゆえに海から流す。その時、安全に陸に流せる場所と言えば、イタリア南部の港だろうと考え、イタリアマフィアと協定を結ぶことにしたそうだ。
正直、カモッラやコーサ・ノストラ、ヌドラゲタに掛け合えば良いと思うのだが、ここ最近、三つの勢力は最盛期よりも力を無くし始めている…と言ってもマフィア全体の力がだが…。
しかし、そんな中、規模は小さいが勢力が格段と上がり始めている組織パッショーネ≠ノ彼らは目を付けた。
パッショーネは、利害の一致によって上三つの勢力とも協定は一応やっているし、それに伝統的なマフィアではなく最近できた組織だから話しやすいのだろう。
彼らの申し出に、ボスは快く承諾し、安全に流せる港等を提供した。彼らの稼いだ金は此方に入って一石二鳥だし、無駄な血を流さずに済むからだそうだ。
私は人身売買やそういった物に口を出すつもりは無い。確かに麻薬漬けにされて売春を強要されている女性や、児童ポルノの餌食になっている子供たちは哀れだ。
自分が女だから猶更、胸が痛い。が、組織の貴重な収入源であるため何とも言えないのだ。
だが、売られている女性たちも貧乏なため金の欲しさに身売りしたり、自分の生んだ可愛い我が子を売って生計を立てている女だっている。
それに、麻薬だって現実の嫌な事を忘れたいがためにやってる人間が大勢だ。
経済が良くなれば、そんなことは起こらないのだが、イタリアは何年もの間、不況で苦しい思いをしている人間が大半であるため、こういった負の連鎖が起きてしまう。
この連鎖を止めたいのならば、経済や政治を良くしなければいけない。
しかし、その政治も腐敗しきっており、何処から手を付ければ良いか分からない状態だ。
ジョルノがギャングにならなければ変える事が出来ないと言っていたが、まさにその通りである。しかし、ギャングになったからと言って、変えれる問題でもない。
イタリアの裏社会は色々な物や人が繋がっている。下手に何かをしようとすれば、邪魔者とみなされ暗殺されるのが落ちだ。尚且つ、関係のない多くの人々の職や命が犠牲になり、今の社会をもっと悪化させる可能性がある。
先人の悪党が作り上げてしまったルールを捻じ曲げる事など、不可能に近い。
「ボスは…今の状態で良いと…思います?」
『何がだ?』
「この組織がやってる事ですよ…。」
そうボスに尋ねると、しばらくたってから返事は帰って来た。
『…なら、ドッピオよ。麻薬や人身売買以外の方法で組織の収入源を確保出来るか?麻薬や人身売買を我が組織が辞めたところで、他のマフィア共がその穴埋めをし、もっと悪化する可能性がある。それに、私たちは組員の家族の安全等を払っているのだ。下手な真似をして周りのマフィアを敵に回してみろ。いくらスタンド使いとは言え、組員もろとも皆殺しにされるだろう。何かを守るには何かが犠牲になるしかない。この世界はそうやって成り立っている。』
ボスの言ってる事は、頭の中では理解しているが、非常にもどかしかった。
そんな時だ。
協定関係にあるカモッラの下っ端の下っ端組員が麻薬取引を地元の漁師に見られてしまい。
その漁師を殺そうとしたものの、何者かに返り討ちにされたそうだ…。
たまたま、その漁師の入院している病院がパッショーネの傘下にあるため、調べて欲しいと、カモッラの方から言付けが来た。
自分で調べろよ。と思うが、他人の領地で無許可に踏み荒らす事は出来ないため、こう言う物がたまにある。
本当にヤバかったらこんな風に言ってこないで、さっさと殺してるからな。
そんな事より、私の頭の中には漁師という言葉を聞いて浮かんだ顔があった。

ブチャラティだ…。



*



「例の少年…ブローノ・ブチャラティ…彼を一体、どうするつもりだ?ポルポ君?」


ネアポリス刑務所。ホテルのスイートルームだと見まごうばかりの独房には著名な作家の絵画やら色々な物が鎮座している。
視界からはみ出るほどの脂肪を蓄えた巨漢は、何時ものだらけた高慢的な態度ではなく、脂汗をかきながら、怯えた眼差しで私の顔色を窺っている。
今の私はそんなに怖い顔をしているのかな?
「…ブローノ・ブチャラティ…。彼については此方の面子もありますし、このまま父親ごと始末しようかと思っていますが…。」
私はブチャラティについて書かれた書類を眺めながなら低い声で言い放つ。
「へぇ〜、このまま始末ねぇ…。年齢は12歳…まだまだ人生これからじゃあないか。こんな幼気な少年を殺してしまうのかい?」
「……というと?」
「ハハッ、使えるんじゃないか?って言ってるんだよ。それに彼の方から組織に入る代わりに、父親を助けて欲しいと言ってるじゃないか。自分の人生を捨ててまで、父親を守るなんて…本当に尊敬するよ…本当にね。」
そう言い目を細めると、ポルポは目を見開き驚いた表情で呟く。
「彼を…助けるのですか?」
「助けるなんて……聖人みたいな物言いだな。助けるんじゃない…利用するだ。彼は自分の事よりも他人を思いやる子だ。とても良い部下になるだろうよ。」
「…しかし、カモッラにはどう言う気ですか?」
「言うも何も…潰せばいいじゃないか。良くやって来ただろ。君らのお得意分野だ。それに組員にもなれてないチンピラのミス。それ程、アッチも気にしてないようだしね。」
「わかりました…。では、例のチンピラ共を始末させておきましょう。」
「よろしく頼むよ。」
その言い独房から出て行こうとしたが、足を止めポルポの方へと振り向く。
「そう言えば…その二つの絵画…ゴッホとゴーギャンかい?」
「えぇ…そうですが。」
「あーやっぱり…にしても、君は…中々の物好きだな。あの二人の絵画を並べるなんて…。」
「この二人には色々とありましたからね。」
「耳切り事件…意見の相違で、逆上し錯乱したゴッホは、カミソリを手にゴーギャンを追いかけるが、果たせず自宅に戻ると自分の耳を切り取る…フフ、君も自分で耳を切らないように、気を付けると良い。」
何を言ってんだコイツみたいな、視線で見られてるけど、ジョルノに気を付けてねー!って忠告したんだけどなっ!
てか、気が滅入るなぁ…ブチャラティ君は、ギャングなんて物は似合わねぇよ。普通に人生を送って欲しかったが…まぁ、仕方ない。
てか、ポルポって本当に太ってるよな。あんな体型で良く生きていられるよ。刑務所から出たら即殺されるな。
まぁ、出なくてもいずれ死ぬが…。
刑務所から出ると、見慣れた二人の男が車に寄りかかって、此方に手を振って来た。
「ドッピオ…用件は終わりましたか?」
「あー!ティツァーノにスクアーロ!君らがお迎えか!用件なら終わったよ。」
「なら良かった。終わった処、悪いんだが、次も詰まってるからな。車に乗ってくれ。」
「アッハイ、分かりました。」
参謀ってのは、色々と大変だぜ。
てか、ティツァーノとスクアーロってやっぱり付き合ってんのかな。男同士なのに物凄く引っ付いてるよね。
やっぱりホ『ドッピオよ…。』
「なんです?ボス?」
『今、何か失礼な事を考えただろ。』
「エッ、ナンノコトカナ?」
『……思ってても、口に出して言わない事だな。』
アッハイ、分かりましたってつい呟いちまったじゃあないか。
何か久しぶりにボスと考えてる事が同じかもしれない。


*


「これ程、再会が嬉しくないのは初めてだわ。どうして、こんな奴が親衛隊なんだよ!!闇医者がぁ!!!どれぐらい金を積んだ!!野郎ォ、ぶっ殺してやる!!!」


日曜洋画劇場のコマンドーに出てくるベネ●トさんの台詞を口走りつつ、クソ医者どもに飛びかかろうとしたが、ティッツアーノとスクアーロに取り押さえられてしまった。
目の前でニヤニヤしながら、元患者に角砂糖をあげてるクソ医者を始末しようとするも、羽交い締めされた所為で、スタンドが出せないので始末が出来ない。
「ドッピオ!落ち着いてください!確かにコイツ等には禄でも無い目に合わされましたが、奴のスタンド能力は強力です…!下手に手を出したら騒ぎになりますよ!」
「ティッツァーノの言う通りだ!落ち着け!」
「親衛隊に入れたら、もっと五月蠅くなりそうだから始末しよう。」
正論を言ったはずなのに、抑え付ける力がどんどん強くなっていく。こんなの絶対におかしいよ。
『…ド、ドッピオよ。気持ちは分かるが、ここは耐えるのだ!奴らはこの組織の最終兵器として残しておく事にした。それに、奴らを野放しにしたとしても、他の組織に行かれたらもっと厄介だ。冷静になれ。』
「ぐぬぬぬ・・・・。」
クソォ…!ボスの正論に言い返せない!
そうだよ、今コイツ等を野放しにしたら大惨事が起こりかねない。
私よ。冷静になるのだ。
そんな調子でいると、闇医者の奴は余裕かました顔で言ってきやがった。
「精神は専門外だぞ。まぁ、別に診れないわけじゃないが…ククッ。」
「断る!」
「にしても、やはり唯の小娘じゃなかったな。まさか犯罪組織パッショーネの幹部だったとは…。」
「そうですよーそれが何かなー?てか、天才外科医様がどうして此方にー?」
「相変わらずだな。フン、医者という職に飽きただけだ。金もあるし、こっちの方が色々とやりやすいだろ?」
「アッハイ。そうですね。じゃあ、拷問とかそう言う仕事を貴様に回してやろう。感謝するが良い。」
「羽交い絞めにされてる奴が言っても、威厳のへったくれも無いぞ。お前も、そう思うよなぁ〜?セッコ?」


やはりコイツ等は絶対に何時か私の手でコロシテヤル。そう決心した。


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