そう思って森を抜けた其処は――――地獄だった。

あたり一面、累々と死体が横たわっており、肉の腐った臭いとむせるような血の臭いに思わず口元をふさぐ。あまりの凄惨さに吐気が込み上げてきたものの、我慢したが、何なんだ…これは…。恐ろしさと惨さで足が竦む。
その場所からは、カラスや野生の動物達が死肉を貪り食う咀嚼音や蝿の羽音が辺り響いている。
これが戦場…これが地獄≠ゥ…。
転がってる死体の中には、自分と同じくらいの年の子どもや兄ぐらいの子も混じっている。子ども達の死体の大半は恐怖のあまり怯えきった顔をしていた。その子達の姿が何故か兄のマダラに重なる…。日本の戦国時代だって、初陣は15歳くらいからだった筈だ…うぅ、酷すぎる。こんな場所に長居したら気が狂ってしまいそうだ。
そう思って、死体を避けながら前を進むと、カキーンと金属がぶつかり合う音と男の怒号が響いた。直様、姿勢を低くしてその様子を眺める。そういえば、この戦場から複数のチャクラを感じてたんだった。戦場が酷すぎてそんな事を忘れてたわ…。眺めていると、羽衣一族の紋が絵描かれた鎧を着た5人ぐらいの忍びが独りの少年を追い回している。
追い回されている少年には何処かで見覚えがあった。自分と同い年か一つ上くらいで、銀色の髪、特徴的なツンツンした頭をしていおり、不恰好な千手の紋が描かれた鎧を着て、果敢に大人達に戦いを挑んでいる…。だが、誰の目から見ても勝ち目は無く、正直言って、羽衣一族の忍び達に遊ばれている。戦場の狂気に犯された大人達に理性なんて言葉は無く、唯々、目の前で逃げ惑う少年を嬲っているのを楽しんでいるだけだ。
嗚呼、此の侭では彼は嬲り殺されてしまうーーー。
そう思って、咄嗟に懐に手を伸ばしたが、一瞬、戸惑ってしまった。自分とは全く関係ない戦に乱入したら、一族に迷惑を掛けてしまう。
が、相手を殺さず、顔を見られていなければ話は別だ。
私はついさっき買ったばかりの、眠り薬を塗った千本を取り出し、瞬歩で一気に間を縮め、彼らの首元へと放った。千本に刺された瞬間、羽衣一族の連中は小さな悲鳴を上げて次々と倒れ、気絶していった。
これでこの戦場で意識があるのは、私と彼だけだ。
少年を見ると、彼は目をまん丸にして、驚いた表情で私の事を見ている。だろうな、こんな女の子が目の前にいる大人達を倒すなんて誰だって驚くだろう。そう思いつつ、視線を下に向けると、彼は腕を小さな手で抑えている。其処からは真っ赤な液体が流れ落ちていた。
「ねぇ、大丈夫?」
そう尋ねたものの、返事はせず、少年は唯々、固まっている。私が痺れを切らして、側に寄ろうとすると、ビクリと体を震わせ後ずさってしまった。
「大丈夫だよ。傷付けたりしないから、その腕の傷をみせてよ。」
そう言って、再び側に寄ると、少年は渋々、腕を差し出す。クナイで斬られたのだろうか、まぁ、そんな事はどうでも良い。
私は自分の着物の袖を千切って、少年の傷に包帯がわりに巻いた。すると、少年あっと声を出して私に尋ねた。
「……良かったのか…その着物…。」
「別に大丈夫だよ。私の着物より自分の心配しなよ。さっきは危なかったね。」
「あぁ…死ぬかと思った。」
「だろうね。遠目から見ても殺され掛けてたもん。」
「…お前は、お前は、忍びなのか?」
「いや、今の所、忍びじゃないよ。忍術は使えるけど…人は殺した事は無い。」
「…そうなのか。」
そう言った後、暫く無言が続いた。やっと、手当が終わり、改めて彼の顔を見る。
幼いながらも鋭い目付きだが、まだまだ子どもらしいあどけない顔をしている。夕日に照らされた銀色の髪の毛はキラキラと光ってとても綺麗だった。
「扉間…。」
「うん?」
「俺の名前は、扉間だ…お前の名前は…。」
「私の名前はーーーイズナ。」
「イズナか…さっき助けてくれて…ありがとう。」
そう少年ーーーいや、扉間は照れ臭そうに俯きながら呟いた。可愛いな、オイ…。
「ウフフ、どう致しまして!それじゃ、私は帰らないといけないから!じゃあね!」
私が去ろうとした瞬間、扉間は何か言いたげに口を開こうとしたその時、彼の名を必死に呼ぶ声が聞こえた。
おそらく、彼の親族だろう。彼は咄嗟にその声の方へ振り返った。私も家族の元に帰らねば、そう思って、彼を置いて瞬歩で戦場を後にした。
今、思えば運命の歯車はこの時から狂っていたのかもしれない。ついでに、必死に瞬歩で急いだものの、里に着く頃には、夕日はもう完全に沈んでいた。


私の地獄はどうやらこれからのようだ。




*




ど、どうしよう。


里の周辺に沢山のうちはの忍びが沢山いるよ〜帰りづら過ぎて死ねる。
バレずにすっとぼけて、里の中に入る事は可能だが、唯じゃすまない。いや、どっちにしろ唯じゃすまない。此処は正直に堂々と里の入り口から入ろう。
そう思って、入ろうとするけども、里の入り口付近から凄まじい殺気とドス黒いオーラが目に見えるぐらい感じられるぞ…。ヤバイヤバイよぉ…行きたくないよぉ…。そう思いながらビクビクしつつ、入り口へと近づく。すると、胸倉掴まれてブンブン揺らされてる一本結びの少年が見えた。アレ…ヒカクさんじゃね?てか、揺らしてるのは…マダラ兄さんだぁああ!!!般若の形相して揺らしてるよ。後、戦から帰って来たばかりなのだろうか、返り血が良い味出して不気味さにプラスしてる。兄さんはそのままお化け屋敷に行けば、お化け役の人に反対にビビられるよ。それと背後にいる、タジマ父さんが兄さんを落ち着かせようと久しぶりにアタフタしてる。いや、そんな事よりも、うぉおお…ヒカクさんがとばっちりに遭ってるから止めなければと思って、勇気を出して兄の名を呼んでも反応しないお。タジマお父さんは気付いてくれたけど…。
「どうして、イズナを止めなかったんだぁぁああ!!!一人でおつかいなんて早すぎるぅ!!!それも、空区だとぉお!!!他の忍びやら盗賊に襲われてたらどうするつもりだぁああ!!ヒカクゥウ!!」
「マ、…まだ…っラ…ご、ごめ……、ん…」
「マダラ!落ち着きなさい!イズナは無事です!貴方の後ろで怯えてますよ!ヒカクを離しなさい!」
「え、イズナが俺の後ろにいる…?」
我に返ったマダラ兄さんはそう呟いて、ヒカクさんの胸倉をパッと離した。ヒカクさんはそのまま尻餅をつき、激しくせき込んでいる。
そして、兄さんはまるで壊れたロボットの様に私の方へとゆっくりと振り返った…。
顔が…顔が夜叉のようですぜ!兄貴ッ!てか、本当にヤヴァイ(確信)
「イズナ…。」
「に…兄さん…。」
「何処ほっつき歩いてんだぁああ!!!心配してこっちは死にそうだったんだぞ!怪我はしてないか?お前に死なれたら、オレは、オレは!てか、袖はどうしたぁああああ!どうして破れてるんだぁあ!!!イズナ―――!!!」
『オレは』の処がオレオに聞こえたぜ。ナルトスの所為だ。てか、思い出し笑いしそうになって…私の脳味噌は犠牲になったのだ…マダラァ…。よし、上目遣いしながら、たどたどしく説得して怒りを鎮めよう。
「に、兄さん、心配かけて、ごめんなさい。あのね。袖はね。帰ってる途中で怪我したネコさんが居たから手当してあげたの。だから、遅くなっちゃって・・・本当にごめんなさい。」
5歳児の可愛い上目遣いで堕ちろぉお!マダラ兄さぁあぁん!!
「かわ・・・そ、そうか!イズナに手当てして貰った猫は本当に運が良いな!でも、今度から心配かけんじゃーねぇぞ!里中大騒ぎになったからな!」
大騒ぎにしたのは兄さんの所為じゃねェ?と思ったけど、口に出さないでおいた。てか、タジマ父さんとヒカクさんから白い目で見られてるよ。兄さん。

まぁ、かくかくシカジカ騒ぎが収まった訳だが…父さんと母さんに兄妹二人こっ酷く叱られたのは言うまでもないね!



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