年もいかない子ども達の笑い声と嬉しそうに笑っている女性の声が聞こえる。




話している内容は、男の子なのか?女の子なのか?男兄弟はもう良いから女の子が欲しいなんて聞こえる。
それを聞いた母だろうか、男の子でも女の子でもちゃんと元気に生まれてくればいいわ。と優しく言いながらお腹を撫でてる感覚がした。
けど、子ども達は懲りずに、女の子になーれ、女の子になれーと沢山の手が母のお腹を撫でて念じている感じがする。そんなに女に飢えているのか…。
何だかそれが物凄くウザったいから、蹴ってやったら、ウワー!蹴った!だの念じたから怒った!?だの男になったらどうしよ!?だのギャーピー騒ぎ始めた。そんな様子を見て母はクスクスと微笑みながら、私にこう言った。

「安心して、あなたが男の子でも女の子でも、お兄ちゃんたちは可愛がってくれるわ。」

それを聞いた私はここはとても穏やかで優しい場所だと思った。
兄弟がたくさんいるのが楽しみだ、どんな顔をした人たちなんだろう?って…。
でも、その時の私は外の世界がいったいどんな状況か知らなかった。


知っていたら、母のお腹の中から一生出てこなかっただろうに。






*





「男の子かな?女の子かな?マダラはどっちだと思う?」

年の離れた兄にそう尋ねられたマダラだが、正直どっちでも良かった。
自分が末っ子では無くなるのちょっぴり切ないが、彼にとって重要なのは兄≠ノなるという事だ。今まで年上の兄たちに守られてばかりの自分だったが、今度は自分が守る側になると思うと、居てもたっても居られなくなった。もっと、修行して強くなって、弟でも妹でも守ろうとマダラは心に決めていた。
そして、妹が生まれた。
女の子だと分かった時の兄達は大喜びだった。特に年上の兄が。母も嬉しそうで可愛い着物や髪飾りを沢山買ってあげないと!と言って、生まれたばかりの妹をあやしている。父といえば女の子だと知って、何時もの父では無いぐらい顔が綻んでいて怖かった。兄たちも俺が生まれた時、父親は微笑んではいたものの、あんな緩んだ顔はしていなかったと言って驚いている。
確かに俺の家は、男児ばかり生まれて女児は今まで生まれなかった。
その反動だろうか、父や兄たちは妹の取り合いになっている。自分も妹を抱っこしたいが、踏ん切りがつかず、モジモジしていると、母が察したのか。
「貴方達は十分、あやしたでしょ?マダラにも抱っこさせてあげなさい。」
と言って、妹をヒョイと父と兄たちから奪い取って、俺に渡した。
俺は慣れない手付きで妹を抱っこする。俺の抱き上げ方が酷いのか、父と兄たちは落っことすんじゃないかと、冷や冷やしながら俺と妹を見ていた。それを見兼ねた母の補助のお蔭でしっかり抱き上げる事がやっと出来た。
よく妹を見ると、真っ白でほんのりと赤みがかった傷一つ無い肌に、自分と少し似た顔と、真っ黒でクリッとした瞳は俺の事をジッと見つめている。
「ねぇ、母さん。この子の名前ってなんて言うの?」
「イズナよ。」
「イズナ…か。」
名前を聞いた瞬間、妹…いや、イズナはビクりと体を震わせ、眼を見開いている。
名前を呼ばれたから驚いたのだろうか?暫くの間、そのまま固まっていたが、すぐに元に戻りうたた寝をし始めた。
その愛らしい姿に父や兄たち、俺は虜になっていた。
俺はその時、何が何でも妹を…イズナを兄≠ニして守ると心の中で誓った。


*


世は俗にいう戦乱の時代。

利権や領土拡大の為に国々が争いを続けていた。 忍の組織はまだ一族単位の武装集団でしかなく、それぞれの一族は国に雇われ戦争に参加していた。
その一つが私の生まれたうちは一族だ。この時代にはナルト達の時代にあったようなシステムは無く、多くの子供たちが戦争に駆り出され、亡くなったりするのが当たり前の時代だった。
赤ん坊の私を可愛がってくれていた兄たちもマダラを残して、対立関係にある千手一族に皆殺されたそうだ。まだ人生これからって時なのに。
私はなんて場所に生まれたんだろう。前世の現代日本じゃありえない世界だ。漫画の世界だから良かったものの、今の私にとっては現実だ。夢でも幻でもない。
殺すか殺されるか…そんな世界に私は生まれてしまった。現代で言うバルカン半島とかイラク、アフガン並みに酷い戦場なんだろう。
前世の日常が非常に恋しかった。私はこの世界で生きて行けるだろうか。
いや、生きなければいけないのだろう。
死んでいった兄達の分を含めて長生きしてやろうと思った。

唯一の兄であるマダラと一緒に。


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -