「マダラ…お前に会っている少年がいるな。」


「どうしてその事を…」
兄さんは明らかに動揺していた。何故、父親がその事について知っているだろうと…。
すまない!兄さん!私の所為や!私がタジマ父さんに脅されて後を付けてたんだ!
「ごめん。兄さん。タジマ父さんの命令で仕方なく、嫌々兄さんの後を付けてたんだ。」
「イズナ…一言、余計ですよ。」
「事実だもん!」
そう言うとタジマ父さんが鬼の様に睨み付けてきた。うげげ…だって本当の事を言っただけじゃないか…。
まぁ、同じく睨み返してやったがな…タジマ父さんは私から顔を逸らすと、兄を真っ直ぐ見つめ、こう言った。
「あの少年は私が調べました…千手一族の人間です。我が一族の大人達の手練れもやられています。生まれながら忍の才能を持つ少年のようです。」
マダラ兄さんは顔を強張らせたものの、柱間さんが千手一族だと聞いてもそんなに驚かなかった。
それから父さんは兄さんのガラスハートを傷つけるような事を続けざまに言った。
千手の情報を盗んでこいとか…バレたら殺せとか…あのさぁ…兄さんの繊細な心に亀裂が入るじゃん!
兄さんの初めてのお友達を殺すなんて!どこのロミオとジュリエットだよ!
「念のために、私とイズナも付いていきます…いいですね?」
「ファ!?私も付いていくの?!何で???父さんだけで良いんじゃない???」
「貴女も一緒に行くんです…例の事…マダラにバラしますよ?良いんですか?」
「アッハイ。付いていきます。喜んで付いていきます。」
アカン。例のアレ…こっそり祭りに行った事を兄さんにバラされたら…沈んでる兄さんは少しはキレて元気を取り戻すかもしれんが、アカン。
クッソ!してやったりって顔するなよ!タジマ父さんめ!タジキチスマイルやめろォ!
「イズナ…今度は何を隠してるんだ…。」
「えぇえええええ!!!何も隠してないよぉおお!隠しててもたいした事じゃないからぁああ!!!」
「隠してるんだな…。」
「はーい!隠してマース!乙女に秘密は付き物デース!」
ゴチン!っと思いっきり殴られたし…けど、何時もより威力が弱い。
やっぱり、柱間さんの事を引きずってるのか…何か初恋を引きずる男子みたいだな。
女々しいぞ!兄さん!まぁ、何時もの事だけどね!



*



今日の夜、何時も通り、兄さんとお風呂に入って、同じ布団で寝ているのだが…。
あっ…風呂?風呂なら何時も一緒に入ってるよ?一気に入った方がお付きの仕事が減るからね!
兄さんの裸とか毎日見てるし、慣れっこだよ。そもそも、子供の身体だし…ちなみに、私はショタコンじゃない。扉間が可愛過ぎて目覚めそうだったけども…ショタコンじゃないよ。
兄さんだって私の裸は見慣れてる筈だし、赤ちゃんの頃からオムツ変えて貰ったりしてたから気にしてないと思うよ。
多分ね。多分。
それよりも…スパイをして来いってタジマ父さんに命令されて以来、兄さんは上の空だ。
何か話し掛けても、あぁ…とか、そうだな…とかしか言わないし…大丈夫か?
いや、全然、大丈夫じゃないな!
柱間さんを殺したら兄さんは一生、後悔するだろうし、正気度がゼロになるかも…。
何とかして回避せねば…って、扉間も父親を連れて来るだろうから、兄さんと柱間さんを逃がすついでに殺り合って時間を稼げば良いか。
そんなこんなを考えてたら、隣で寝てた兄さんが私の身体を前からギュッと抱き締めてきた。
うわぁああマダラ兄さんのツンツンした硬い髪の毛が顔に突き刺さる!!痛いよ!!って言いたいけど失恋気味のマダラ兄さんに言う勇気はない。
男の胸って言うのは何も言わずに黙って貸してやるものだと、前世の友人が言ってた…って、私は男じゃない。まぁ、いいや。とりあえず、貸してやる物なのだ。
「イズナ…。」
「…兄さん?大丈夫?」
そう優しく言って、マダラ兄さんの硬い硬い髪の毛を撫でてやる。
すると、マダラ兄さんは強く身体を抱き締め、胸に顔を埋めて来た。顔は暗くて良く見えないが、声を殺して泣いている様にも見える…。
思いっきり泣けば良いのになー、マダラ兄さんの顔と性格は思いっきり父さん似だけど、こういう処は母さんにそっくりかもしれない。




*



「考えることは、同じようですね……千手仏間。」



「以心伝心!?凄いね!父さん!いっその事、仏間さんと結婚しなよ!これで千手とうちはは仲よ……」
全部、言い切る前に思いっきり殴られた。てか、父さんや兄さんに殴られまくってるから頭が頑丈になってて良いと思うんです。
後さぁ…何時ものノリで話しただけなのに、白けてんじゃねよ!扉間の奴が何故か頭抱えてるし、柱間さんはポカンってしてるし、仏間さんは何だこの小娘みたいな目で見るなよ!
「・・・・・・のようだな。・・・うちはタジマ。」
「イズナ!!!!!」
「うわぁあああ、身の丈に合ってない刀を振り回すなよ!まだ開始の合図はやってないでしょ?」
扉間の奴が瞬歩を使って飛び込んできた。おお、少し成長したが…まだまだだね。
奴の刀を軽く力を入れて遠くへ弾き飛ばし、すぐさま、扉間の首根っこを掴み向こうの川岸すに叩きつけた。
その直後、仏間さんが投げてきたクナイを弾こうとしたが、代わりに飛んできた石が弾いた。
それと、同時にマダラ兄さんと柱間さんが目の前に現れる。
「妹を…傷付けようとする奴は誰だろうと許せねェ!」
そのまま、お互い睨み合い黙っていると、マダラ兄さんが口を開いた。
「オレ達の言ってた…バカみてーな絵空事には、しょせん……届かねーのかもな……。」
「…マダラ…お前…!?」
「少しの間だったが楽しかったぜ…柱間。」
戦国時代のロミオとジュリエットですね。分かります。小説にしたら売れそう(小並感)
にしても、さっきから扉間の視線が痛い。怒ってる理由は粗方、分かってるよ!
投げ飛ばしたから怒ってるんでしょ?本気を出したら刀を弾き飛ばした時に殺してるからねー。
けど、投げ飛ばした時、チラっと耳にお揃いのピアスを着けてて嬉しかったぞ。
「3対3か…どうだ。いけるか?マダラ。」
「イヤ…柱間は俺より強いが…イズナが居るから微妙だ。このままやれば、勝てるかもしれない…けど、痛手を負うことになるのは確実だ。」
「…そうか。…それほどとはな……。」
「だったら、今、戦う必要は無いんじゃない?兄さんはちゃんとした装備をしてないし、嫌でも戦場で戦う事になるんだろうしさ…また今度、決着つけようよ!」
「………引くぞ。」
「じゃあな…。」
そう言うとマダラ兄さんは柱間さんに背を向けて歩き出した。兄さんは顔には出してないけど、感情を押し殺しているのは明らかだ。
「マダラ、お前…!ホントは諦めちゃいねーよな?お前はやっとオレと同じ…」
「お前は千手…できれば違って欲しかった。俺の兄弟は千手に殺された…。」
そんなのお互い様じゃないか。戦争だから仕方ない。嫌なら戦うのを止めればいいのにと思うが、止めたらやめたで嬲り殺されるのでNG。
世の中、力がすべてみたいな感じだからなーどの世界でも似たり寄ったりだけども。
「…だからさ。お互い腑を見せる必要もねーだろ。次からは戦場で会う事になるだろうぜ……千手柱間…。オレは……うちはマダラだ。」
そう言った兄の眼は写輪眼に変わっていた…ファ!?今、開眼したん!?マダラ兄さん繊細すぎぃ!!!やっぱり、柱間さんは初恋の相手…兄さんはホ…いやいやいやいや、そんな訳がない。流石にアレだよ。兄さんは普通に女の子が好きだよ。多分。柱間さんに対する感情は親友みたいなもんだ。うんうん。
「兄さん!やっと写輪眼を開眼したんだね!これでお揃いだね!」
「なっ、イズナ!お前、何時の間に!?」
「フフッ…千手の情報は入らなかったが…代わりに良い物を此方は手に入れたようだ…。」
タジキチスマイルしながら父さんも格好付けて写輪眼を出した。親子揃って写輪眼…なんかシュールだよね。
「……写輪眼…今、開眼したのか……?」
てか、仏間さんはどうして兄さんが写輪眼を開眼したのか分かってない様子だ。
もしかして、写輪眼の特性を知ってるのか?やっぱ、宿敵?だから、そう言うことも調べたりしてんのかな?
それにしても、仏間さんもタジマ父さんと似たような頑固親父だろうな。なんか大工さんみたいだわ。
木遁が使えるならそのまま、建築士になればいいのに…。
いや、それよりも、扉間以上に仏間さんの視線が痛いぞ!殺気だよね!コレ!私って仏間さんに何かした?してないよね!!!まぁ、息子には手を出したかもしれんがな!
そんな事を考えていると、珍しくタジマ父さんが私を仏間さんから隠す様に前へ立ちはだかっていた。何時ものタジキチスマイルから、マジ切れした時の顔に変わってて、コワイ。
やっぱり、千手とうちはは仲良くなれないのかなー…仲悪すぎるわ。これじゃあ、どうあがいても扉間と殺し合う事になるなー。

まぁ、とっくの昔に覚悟してきたことだし、戦争だって割り切ってるから、私は大丈夫だけどさ…マダラ兄さん……。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -