バウヒニアの花言葉 | ナノ



静まり返った夕暮れの校内。
専門教室の集まる北校舎の長い廊下は夕日に赤く染まり、綺麗に磨かれた床に私の影を長く長く映していた。
コツコツと響く足音がいつもより大きく聞こえるのはここには私以外の人影がないから。

通常なら私も部活に行くなり下校したりしている時間なのだが今日は生徒会の雑務に追われ、すっかり遅くなってしまった。
北校舎の最上階は生徒会室をはじめ普段あまり使われない教室が集まっているためか嫌に静かだ。
まるでこの世界から私以外の人間が全ていなくなってしまったかの様な錯覚に陥る。
夕方の校内って独特の雰囲気を醸し出していて少し怖い。

なるべく早く帰ろうと歩みを早めた。
そして2階へと降り、ちょうど家庭科室の前に差し掛かったところで私は足元に赤い小さな水たまりがある事に気が付いた。
気になって床にしゃがみ込んで顔を近付ける。
赤黒く乾いたそれは…

「血?」

いやいや、まさかね。
と、自分の率直な感想をすぐさま否定する。
こんなところに血だまりがあるワケがないじゃない。
きっとこの不気味な雰囲気に飲まれているだけだ。
そう言い聞かせるも…何だろう、何か引っかかるものを感じるんだよな。
このじとじとした感情を拭い去ろうと指でその赤をなぞってみればぬるりとした感触と鉄の様な鼻に付く臭い。

「嘘…!」

拭い去るどころかより一層濃いものになってしまった。
パッと顔を上げて遠くを見やれば赤いシミが長い廊下のずっと奥の方まで続いていた。
もし本当に血だとしたら、流した主は結構な量を流していると思われる。

「行かなきゃ…。」

これは次期生徒会役員としての責任感…というのは表向きの理由。
本当はただの怖いもの見たさの好奇心。

私はこの点々と続くこの赤いシミを辿ってみることにした。


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