バウヒニアの花言葉 | ナノ


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駅前の行列のできるクレープ屋の周辺に着くと、行列どころか私達以外の客の姿は無かった。
さすがに今にも土砂降りに見舞われそうなこんな時にわざわざクレープを食べに出歩く物好きはいないのだろう。
いかにも女子受けしそうな可愛らしい看板が何だか今日はくすんで見える。

「ワー!並ばずに食べられるなんてラッキーだヨ!」

しかし湾ちゃんはそんな事は気にもしないのかこれ幸いと嬉々として目的地へと駆け出した。

「…女子って可愛いなぁ…。」
「お前も女子じゃん。」

私と香くんも女子力を振りまく湾ちゃんの後に続く。
かくいう私もいつぶりかも分からないくらい久しぶりのクレープに何となく気分が高揚してくるのが自分でも分かった。
なんだ、まだまだ私も女子としてイケるんじゃん。

「いらっしゃいませ。こちらからお好きなメニューをお選びください。」

にこり。
営業スマイルのまぶしいお姉さんに差し出されたメニュー表を覗けばそこにはこれまたまぶしいスイーツの写真が所狭しと並んでいた。
チョコレートにストロベリーにカスタードにバナナにキャラメルにキウイにアプリコットにフランボワーズ?
それどころかチーズケーキにブラウニーまである。
最近のクレープはえらくハイカラなようだ。
私が最後に食べたクレープはこんな華やかじゃなかったよ、せいぜい生クリームとイチゴくらいのものだったよ。
ジェネレーションギャップってやつですかね、同い年だけど。

「俺キャラメルナッツアイスにトッピングでクランチ。」
「じゃあ私はイチゴチーズケーキ生クリーム大盛りにバニラとストロベリーのアイス追加でお願いしますヨー!」

そんななんだかちょっぴり切ない気分の私を他所に、2人は慣れた様子で聞いてるこっちが胃もたれしそうな注文をする。
早くも流行について行けてない私ですがこれはアレですね、スイーツ男子力にメガ盛り女子力ですね、分かります。

「あ、あとその上にブラウニー追加で。」
「じゃあ私も上に雪見だいふく追加デ!」

ごめんやっぱ分かりません。

「なまえは何にすんの?」
「え、私?私は…」

おっと、ハイカラなメニューや2人のメガな注文に圧倒されて決めていなかった。
まだお昼ご飯食べてないからお腹すいてるんだよなー。
でもいくらお腹が空いてるとはいえこの2人みたいにメガ盛る勇気も平らげる自信はない。
何か良いものは無いかとメニュー表を一通り見回すと隅の方にちょこんとあった私の幸せ。

「ソーセージとスクランブルエッグのとろーりチーズ…」
「「却下!チョコレートマシュマロアイスの生クリーム特盛りにチョコレートソースとブラウニーとプリン追加で!!」」




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