ばれんたいん?
ああ、バレンタイン。そんなイベントもあったな、って思うほど私とはあまり縁のない日だった。
昼休み、いつもなら食堂や教室で各々昼食を済ます私たちだけど、今日は少し違った。茉咲がクラスに来たから、てっきり春に用があると思ったけど、違った。


「ど、どれがいいかな!?」


目の前に広げられたのは、これ全部買ったのかと思うほどで、見てるだけで胸焼けしそうなお菓子のレシピ本。私もそんなに得意ではないけど、一緒にうーん、と考える。


「やっぱりこの辺じゃない」

「わ、私でも作れるかな…?」

「割りと簡単だし…。不安だったら練習とかすればいいよ」


バレンタインなんて私は茉咲に言われるまで、全然気にしてなかったのに。やっぱり凄いなぁ、とその横顔を見る。ころころ変わる表情は言葉にしなくても、だいたい分かるっていうのもなかなか面白かったりする。


「ラッピングとかでも可愛く出来るから」

「ラッピング……!」


ああ、また。私は悩みの種を一つ増やしたみたいだ。そんなに気負うものでも、というのは私にはそういう気持ちがないからだろう。


「……ここの店、そういう雑貨とかあるから」


何度かバイトで必要だったから行った店だけど、確か包装品も売ってた気がする。場所を書いた紙を渡すと、さっきとは変わって凄く嬉しそうな顔をする。ありがとう!本当にありがとう!と予鈴が鳴ったあとも何度もお礼を言う茉咲に、いいからと見送る。
駆けてく小さな背中に向かって頑張ってね、と呟いたけど多分聞こえないだろう。




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