この間クリスマスとかで忙しそうにしていた街も、今では完全にお正月モードに入った。
年越しとか、今年がもう終わるとか実感がほとんどないくらいあっという間だった一年。広くもない家の掃除を軽く済ませ、時計は既に午後。夜には毎年恒例の神社でのバイトがあるから…と考えてもまだ十分に時間はあった。
さて、あとやらなきゃいけないことは、と考えていると玄関のチャイムが鳴る。来客の少ないこの家、来るとしても幼馴染みの誰か。と思いながらも開けると案の定幼馴染みの一人がいた。


「お邪魔します」


まだ何も言ってないのに勝手に上がり込んで来たのは祐希だった。コートを脱ぎ、テレビをつけて、こたつに入る。自分の家か。


「悠太と喧嘩したの?」

「あれはー悠太が悪いんだよ」


昔から二人が喧嘩すると家に来た。それは決まって祐希の方で、長年の付き合いになってくるとなんとなく色々と分かってくる。ふぅ、と軽く溜め息を吐きつつも私も祐希ばかりに構ってあげる訳にはいかない。夜に出かける分、昼間に済ませておかないと年明けちゃうし。


「…祐希くん、」

「なに」

「そろそろ帰りなよ」

「やだ」

「じゃあ携帯返して」

「それもやだ」


ふぅ、と吐く溜め息は何度目か。既に陽が傾き始める時間になってしまった。一度悠太に連絡を入れようとしたところに携帯を取られるという、なす術なし。多分、悠太は祐希が私の家にいることはだいたいの予想はついてるだろう。しょうがなく二人でみかん食べたりとのんびり過ごす。大晦日とは思えないまったりさだ。
しかし、冬は夕方が短い。オレンジに染まった空はあっという間に消えてしまう。私もそれと同時に支度を始める。


「どっか行くの」

「うん、バイト」

「……棗はオレよりバイトの方が大事なんだ」


まったく何を言い出すんだか。項垂れる祐希の頭にみかんをちょこんと乗せても、すぐ手で払われた。
早く謝ればいいのに、そんなことはもう随分前に言うのを止めた。お互い素直じゃないからなぁ、と思っていたら、本日二度目のチャイムが鳴る。


「悠太」

「ごめん棗、遅くまで」

「いや、私はいいけど」


喧嘩の後に迎えに来るのは悠太。それも昔から変わらない。でも今回は悠太の方から連絡もなかったし、来ないかと思った。そう言ったら、今日はオマケしただけ、ってやっぱり不器用な兄弟。祐希も驚きながらも帰る支度をしてきた。私もそろそろいい時間だからと二人と一緒に家を出る。


「棗はこれから神社?」

「うん」

「風邪引かないようにね」

「うん。ありがとう」


じゃあね、と分かれ道で二人と別れる。が、少し歩いたところで、小さく名前を呼ばれた気がして振り返る。


「……また明日」


祐希に言われたその言葉に軽く手を振り、また歩き出す。また明日、それは凄く近い未来に感じた。来年、よりももっと傍にあって、きっと大事なもの。
もうすぐ、新しい年が来る。




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