ピークも過ぎた頃、ようやく私の勤務が終わる。今年はなかなか売れた気がする、とちょっとした手応えを胸に約束通り要の家に向かう。右手にはワンホールのデコレーションケーキ。なんだかんだで毎年少しは余ってしまうからお土産に貰えることになっていて、さすがに一人じゃ食べきれない、とみんなで食べたのももう去年の話だ。


「あれ、○○さん」

「また会ったね!」


二度目の挨拶をかわすのは東先生とあきらさん。もうバイト終わったの?という疑問に答える。そういえばあきらさんも毎年この近くで何か仕事をしてたんだっけ。詳しくは知らないけど。


「そうだ、ちょうど良かった。これ、塚原くんたちが忘れていったみたいなんだよね」


東先生が持っていったのはレンタルDVDの袋。ちょっと、これ忘れるって五人もいてなにしてたんだ。すみません、と謝る私に東先生も苦笑い。まぁ、私のせいではないから、謝られても困るんだろうけど。


「ちょうど要の家に行くので」

「そっか。じゃあ、」

「あ!棗ちゃん、それケーキ?」


さすがあきらさん目敏い。いーなーボクも食べたーい!とそんなキラキラした目を注がれると。


「…なんなら東先生たちも来ます?」

「いや、でも…」

「いいじゃんこーちゃん!それ見つけたのボクだし!」


もう張り切って先を歩くあきらさんに、今度は二人で苦笑い。いいのかな、なんて言ってる東先生にとりあえず大丈夫じゃないですか、と答える。行くのは要の家だから私がどうこう言えることでもないけど、平気だろう。そうこうしてる内に家が見えてくる。ああ寒い、早く暖まりたい。


「はい、これ」

「うおー俺たちのDVD!」


サンタさーんっ、という声を後ろで聞きつつ、私はもう勝手に上がり込む。寒い寒い、とヒーターの前で暖まってると案の定東先生たちも連れて来られる。


「よ、お疲れさん」

「はい、いつもの」

「おーサンキュ。お前何飲む」

「じゃあ、紅茶で」


了解、とキッチンへと消えていく要。がやがやとにぎやかな声が聞こえる。あきらさんと千鶴の掛け合いも何だか楽しくて。暫くして持ってきた飲み物と一緒に、ちゃんと持ってきたケーキも切り分けられていて、みんなで食べる。なんとも去年と代わり映えのないような、でも私の心はほんのりとあったかい。そんな、聖なる夜。




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