「おい棗、起きろ」


誰かが肩を揺らすので一気に現実に戻ってきた感じ。目を開けると少し呆れたような要が私を見ていて、いつまで寝てんだよ、と呟いた。私どのくらい寝ちゃってたんだろう。いつの間にか背中にはブレザーがかかっていて、落ちそうだったのを引き上げる。たぶん、悠太の。でも周りを見るとさっきまで指導していた悠太や春、千鶴たちすらの姿もない。まだ寝起きでちょっと頭が回らないけれど、要が簡単に状況を説明してくれる。あいつらとだと面倒くさいから、と言いながらも寝てしまった私に付き合ってくれる要はなんだかんだいって優しい。


「そろそろ探しに行くか」


すごく面倒くさそうに腰を上げる。実際待ってれば戻ってくるんじゃない、と思うけど。私もあくび一つして要に着いていく。


「やだ見て悠太、かわいーい」

「いいねえ若いって」


ここまで来て私達って何しに来たんだっけ。しかも中学生相手に出刃亀ってどうなの。
昔はよく遊んでて後ろにくっついてくるような冬樹が女の子相手にねえ、と思うと春以上になんだか不思議。その背中はまだまだ子どもだけど、あの子にとっては確実に頼りがいのある男の子の背中だった。少しだけ甘酸っぱい気持ちになりながら、私も年取ったなって思うのにはさすがに早すぎる。




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