まだ部活をしている生徒たちの声を後ろに聞きながら校門を出る。要は生徒会、春はお姉さんと買い物の約束で少し先に帰った。祐希は用事があるからとどっかに行ってしまい、ほんとは三人で帰る予定だったが、HR後千鶴が先生に呼び出しをくらったらしい。多分、テストのことで。
そんなこんなで悠太と二人での帰り道。バイトが終わっていつも迎えに来てくれるのは悠太だけど、学校の帰りを二人で帰るのはいつぶりだろう。
「棗寒くない?」
「うん。大丈夫」
何気ない会話が続く。だけど、私の中では祐希が言った言葉がずっと頭の隅っこの方にいて、ふとした時に考える。
"一人でさみしい?"
あの時は慣れた、なんて言ったけど、きっと嘘。慣れることなんて多分ずっとないと思う。ああ、なんだ。私、まだ、
「そういえば、」
「悠太」
「ん?」
「今度、ごはん食べに行っていい?」
「いいけど……どうしたの」
「なんか、ちょっと」
さみしくなって。そう言うと、少し驚いた顔をした悠太だけど、すぐにいつでもおいで、っていつもの優しい大きな手で頭に触れてくれる。それだけでなんだかあったかい気持ちになれた。こんな気持ちになるのも、きっと秋だから。陽が落ちるのも早くなって、ちょっとだけ感傷的になっているだけ。そう自分に言い聞かせる。昔から弱いところを見せるのはなんだか恥ずかしくて、苦手。
「これから来てもいいよ」
「今日はバイトだから」
「そっか。じゃあ迎えに行くから」
「……うん。待ってる」
少しだけ、素直になれた気がする。でもそれもなんだか恥ずかしくてなって、寒さで誤魔化すようにマフラーに顔を埋めた。
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