バイト終わりに向かうが先は要の家。誰が言い出したかは知らないけど、期末テストの勉強をするだとか。私も鞄の中には一応教科書を入れてきた。数学だけだけど。多分、今行ったところでみんながちゃんと勉強している、とは限らない。十中八九は千鶴あたりが音を上げている頃だろう。まぁだから、今日は数学だけでいっか。
「あ、棗」
「ちょうどいい、お前も来い!」
「え、なに、」
「春がアメリカ連れてかれるって」
なに、アメリカ?なんで。
もうすぐ要の家に着くというところでこっちに走ってくる三人に出くわす。流れで着いてくことになったけど、今歩いてきた道を走って戻る私って。
すると少し先に目立つ金髪と、もう一人ブロンドの女性が見えてきた。よく見ると要のお母さんもいる。何話してるのか走りながらじゃ聞こえないけど、なんだか雲行きが怪しいような。と思った瞬間、手を振り上げたのが私たちからも分かった。っくっそ、と横をすり抜けた要によって阻止されたんだけど。あんなに早く走る要は、千鶴と祐希を追いかける以外ではあまり見ない。
「who?」
結果はただの人違い。というよりは綺麗な眼鏡落ち。そしてまた引き返すこの道はもう何度目か。
「やったー!お鍋ー!」
「お前らちょっとは遠慮しろよ」
やっぱり帰っても勉強はしないだろうなぁ。もうすぐ日も暮れる空を見ては、明日は英語を勉強しようと思った。
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