あの忙しい日々が過ぎ去り、またいつもの日常がやってきた。私もバイト三昧な日が続く。文化祭の準備やらなんやらで休みにしてもらってたから、さすがに稼がなきゃ。きっと幼馴染みたちには、呆れ顔で見られるのだけど。
「あれ、発端祐希でしょ。収拾つけてよ…」
「えー…」
あれ、とは昼休みから続いてる最早今はただの鬼ごっこ。こう見てると子どもだなぁと思う。実際子どもなんだけど。今は誰が追いかけてるかは分からない。逃げて、気付いたら祐希と二人。
「ねえ、」
「…なに」
「棗さ、後夜祭の時いなかったじゃん」
なにしてたの、と聞いてくる祐希はいつもの無表情。正直そんなこと聞かれるなんて思わなかったから、思わず言葉に詰まる。悠太が聞かない優しさを持ってるとしたら、祐希はあえて聞く優しさとでも言うか。そんなこと考えてたら、告白された?、って祐希には何でもお見通し。
「断ったけどね」
「…ふーん」
「気になってた?」
「まあね、」
冗談か本気かは分からなかったけど、あの時から心のどこかで引っ掛かってたものがあったのかも知れない。それを祐希が知ってか知らずかでも、少しでも気にしてくれてたことがなんだか嬉しかった。
「あーあ…」
「要っち!何してんのさ!」
「なっ!子ザルが押したからだろ!」
放課後になっても続くそれ。理科室の掃除を罰として受けられた彼らを残し、バイトがあるから、と逃れようとしたけれど、図書委員だった私。司書の先生に申し訳なかったから結局片付けて帰るのだった。
でもきっと私にとっては、こんな日常が些細な幸せ。
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