昨日、結局みんなで日紗子の家に押し掛けたらしい。そんな話をしていた気もするけれど、まさか本当に行っていたとは。千鶴が押し切ったのか、それでもなんだかんだで要はそっちの方が安心したのだと、思う。都合が悪くなったり勝手に一人気まずくなると私たちを巻き込むことは良くあることだった。ただ、要は自分からは言わないもので、何故か上手い感じに一人にならないようになっているのは不思議だ。
日紗子は、みんなが来て、何を感じたのだろう。


「……なんだよ」

「昨日、日紗子に会った」

「…何か言ってたか、」

「別に」


一昨日よりもいつになくぼーっとしている彼は何を考えているか分からない。それでも自分の席に着いて捲らないページに目を向けて動かない要に、少しの苛立ちさえ覚えた。私はその向かいに立って見下ろしながら視線をずらさない。


「…まだ何かあるのか」

「別に」

「じゃあなんだよ。日紗子みたいにはっきり言えよ!」


日紗子、の名前を出してはっと顔を上げる要と初めて目が合う。


「……言わないよ。私は、日紗子じゃないから」


そう踵を返して自分の席に戻る。ちらっと見た時の要は髪をかき上げて考え込む姿だった。私からは何も言おうとも思っていないし、考えてもいない。それなのに何故か無性に気分が悪くて、細く溜め息をつく。覗き込んできた悠太に大丈夫、と答えながらも私の気分は変わらないままだった。





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