電気を消したのも束の間、響き渡る千鶴の笑い声にあっという間に部屋が明るくなる。要の怒鳴り声と、二回目の消された電気に、部屋は月明かりが射し込む。なんだか誰かと一緒に寝る、ってことが不思議でいざ寝ようと思うと寝れなくて、さっきまで感じてた眠気はどっかにいってしまった。


「ねーねー」

「おっま…」

「はいはい これ最後これ最後」


寝れないのは千鶴も、みんなも一緒なのかなぁ、と始めるのは昔話。要の家に泊まった時とか、小学生の時の話だったり。まだ千鶴と出会ってない頃だけど、こういう話、聞きたかったりしたのだろうか。
小学生の頃はいい意味でも悪い意味でも何も考えないで毎日を過ごしていた。今はいつも面倒くさいことばかり考えてしまっていつも振り回せてしまう幼馴染みに申し訳ないと思う。今、こうして考えてることも、きっと面倒くさい。


「で、なっちゃんはどんな感じだったの?」

「……私?」


急に呼ばれた名前にすぐ反応出来なかった。私、どんな子だったけ。


「棗もあんま変わってねえな」

「昔から男女ともに人気ありましたからね」

「そんなことないよ」

「棗も結構モテてた」

「えっ!マジで!」

「今でも」

「ちょ、祐希、」


違うから、と答えても千鶴の追及が止まらなくて恥ずかしさやらなんやらを隠すように布団をかぶる。
諦めたように今度は標的を悠太に変えるも答えはあまり変わらない。悠太もまわりに心配かけさせたり、自分のことをたくさん話すわけじゃないからこういう話を聞くのはなんだか新鮮な気持ちだ。


「悠太はいっつも人のことばっかり」


そう、悠太はいつも優しかった。いつでも、誰にでも。もちろんそれが悠太のいい所で好きな所でもあるんだけど、私も甘えすぎてしまう。それは私の悪いところだ。
電気を消してからどれくらい経っただろう。眠る気配もなくなった部屋に響くのは春のお腹の音。コンビニ行くべ!と起き上がった千鶴につられて外に出ると、少しだけひんやりする風と、街灯と星明かり。夜はまだまだこれからだ。






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