千鶴に似合わなそうな高価なポラロイドで撮り始めたのは、最近のこと。写真部の先輩に頼まれたー!とカメラを構えるその姿にそろそろうんざりする頃だろう。
そうか、もう卒業式の時期なんだ、と。春からはとうとう私たちが最高学年になるんだなぁと考えるとなんだか実感が湧かない。二年生というのはなんだかんだで一番楽な一年で、上に甘えつつも下もいて、まあ頼れる先輩なんていう存在は私にはなかったんだけど。写真だとか、要が送辞の練習している姿を見かけると妙に現実味が帯びてくる。


「よーし!この調子でお次はゆっきー、そして要っちだ!」

「は!!?」


だんだん千鶴の本気度が増してきた撮影会もここまできたらただのおふざけにしか見えない。なんとか逃れた悠太も、乱れさせられた制服をなんとか整えながら小さくため息をついた。…大変だなぁ。


「棗ちゃんも悠太くんかっこいいと思いますよね?!」

「え、…うーん、」

春にふられて悠太に向けるとふと目が合う。滅多に、というかつけたことないんじゃないかなワックスなんて。いつもさらさらな髪とか違くて少し無造作。確かにかっこいい…、けど、


「…私はいつもの悠太が好き」

「え、ああ、……そっか」


あー髪べたべたする、と髪をいじるその表情は見えない。


「よしっ最後は春ちゃんとなっちゃんね!」

「あ、あのボクはけっこうですから」

「私もパス」


というかこれアルバムに載せるものなのに、こんなのでいいのかな。とりあえず今はこの借りたカメラを少しだけ好きに使わせて頂くことにしよう。
ワックスをつけた要と悠太は意外とも裏では女子に大人気だったことも知ったのは、クラスの女の子にこっそりと聞いたはなし。





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