そういえば辞めてから一度も来てなかったなぁ、とその扉を開けると聞き慣れたチャイムが鳴る。祐希が今日からバイトだと聞き、図書委員の当番で遅くなったけどみんなはもう来ているはず。少しだけ落ち着かずにきょろきょろしているところに、見慣れた顔を発見して向こうも、おっ、と顔をした。とりあえず軽く会釈。


「お久しぶりです、店長」

「おー。お友達なら来てんぞー」

「…あれ、祐希ホールなんですか」

「あの容姿ならホールだろ、しかし愛想ねーわで」


目線の先には既に悠太に泣きついてるであろうというのが、会話が聞こえてなくても分かった。のそのそと歩くその背中を見てもう嫌になってんだろうなーと。平日の夕方とはいえ、店内はそこそこ混んでいて祐希が歩けばすぐ呼び止められるのは、なんというか、さすがだ。少しだけ同情して笑う。


「お前もホールにしたかったんだけどな、あん時はキッチン足らなかったしな」

「…良かったです、キッチンで」

「つーか○○には戻ってきて欲しいわ。お前まじ使えた」


なんですかそれ。とまた少し笑いながらも今バイトは間に合ってると丁重にお断りさせて頂く。
ま、来たならゆっくりしてけよと首をぱきぱき鳴らしながら仕事に戻っていく店長も、なんだか相変わらずだった。


「ごめん、遅くなって……どうしたの」

「あ、棗ちゃん!」

「なっちゃん!!いいところに!」

「私は嫌な予感しかしない」

「あのバカが違う客のを持ってきやがって、」

「僕たち、それ飲んじゃって…」


あーあ。
まあ、でも初日とは言えミスはすることもあるし。しょうがないから素直に謝るしかないんじゃない。というか、祐希…悠太も、あの双子はどこ行ったの。


「お待たせしました。影武者悠太くんの完成です」

「よっしゃ!ミッション開始しますか!」


あーあーあ…。




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