「もし今、つきあってる方とかいないんだったら…」
そして背中を押された女の子がここにも一人。
校門で呼び止められた春を追っかけてきたけど、今日のこの日に女の子に呼び出されるなんて理由は一つしかない。
「うわー春ちゃん告白されてる〜」
わくわく、にやにや。いかにも音に漏れてきそうな私たちの雰囲気。あまり、こう…覗きというか、出歯亀みたいなことはしたくないんだけどなぁ。
「あ、春戻ってくる」
「ちちちちがっこれはっあのっ」
「え〜いいじゃん隠さないで〜」
わたわたしてる春の顔、真っ赤。その隙に祐希たちが開けようとしてるのを要と二人で止める。ちょっ、ちょっとさすがに人が貰ったものを勝手に開けるのはまずいでしょう。
というのも時既に遅し。
「おーすごい。手作りのタルトだよ」
「おいしそー」
「ちょちょっと開けないでくださいよ!」
手作りにタルトは凝ってるなぁ。と感心してたけど、このままだと食べられちゃうような勢いだったから祐希の手からひょいと奪い取る。
「あーまだ食べてないー」
「食べないの、春のなんだから」
剥がされたラッピングも折り目に合わせて元の形に出来るだけ戻して。包装にもお金かけてる、総額いくらくらいだったんだろうとか考えちゃうこの私のお金脳。
「はい、春。ごめんね」
「いやっ棗ちゃんが謝るのは、あの、ありがとうございます」
「あれ、千鶴は?」
千鶴がいないことに気付いたのはもう帰ろうか、って時だった。帰ったんじゃない、って祐希も言うけどそんな、急に一人で帰ることなんてあるかな。
「あ、メールきた。……先帰ってていいって」
それを合図にじゃあやっぱり帰ろうか、とそれぞれの家路に着く。春はその間なんだかずっと上の空だったし、結局千鶴がどこに行ったのかも分からないままだった。
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