みらくるふれんど。





 
新入社員の為に
普段は余り係わりのない
他部署同士が集まって
年に一度の歓送迎会に
出席する羽目になった僕、
赤司征華は困っていた。

何故なら僕はこういった場所が
苦手だからだ。
所謂僕はデータオタクであり、
PCの前に座っている時間が
何よりの至福で。
人間とはどう接したら良いのか
この歳になっても解らない。
だから前髪が顔の半分以上を覆い、
太めの黒縁眼鏡を掛けて顔を隠しているのは
人と接したくないのを雰囲気で
察して貰う手段であり、
面倒臭い大手会社の情報部に就職したのも
従姉妹であり俺が就職した会社の人事部で
俺の技術を買ってくれたさつきが
PCにだけ向かっていれば良いと
都合を付けてくれたから、なのに。
(って言うか何で歓送迎会にさつきがいない?!)

これじゃあ全くもって意味がない!

今現在僕の隣には部長が座ってて、
先程からこれでもかという程
熱心に会社方針を説いている。
それだけならまだ仕方ない。
良しとしてやる。

でも
何故、どうして、
明らかに人間不信だと分かる外見をした
僕の身体にベタベタと触れてくるんだ…!


気持ち悪くて鳥肌が止まらない。
こうしてる間にも部長の呑むペースは上がり、
腰や肩、太股辺りを撫で回すように触れている。

気付いている筈の周囲の社員も
部長も相手選べよと言う雰囲気のみで
見て見ぬふり。
正に四面楚歌だね。

同じくこの面倒臭い大手会社に
就職した幼なじみが
出席しないと分かった時点で
僕も欠席したかった。

しかし新人は絶対と
今身体を触れてきている部長に
押し切られ…って、あれ?
諸悪の根源はコイツか。
間違いなくコイツだろう。
ああああああ逃げ出したい。
というか吐いても良いかな?
良いよね。
だって触られ過ぎて
吐き気がハンパないんだよ。
よし吐こう!

自己完結しながら
せめて嘔吐物は全て部長に
ぶっかけてやろうと部長に向き直った時、



「赤司。」



斜め前から聴こえた
凛とした声に視線を向けると



「こっちへ来い。」



営業部期待の王子様事、
緑間真太郎の姿があった。















緑間真太郎は、その甘いマスクで
女性社員から絶大の人気があり、
他部署からも影で王子様と
宣われている、営業部の部長だ。
僕と大して歳も変わらないのに
部長なのだから異例の出世株だろう。

まあアレだ。
アレだよアレ。

無自覚か計算か。
僕を部長から助けてくれたのは
お礼を言おう。

でもさ、
君の隣は数多の女性陣が狙っている
所謂神席ってやつなんだってば。
それをこんな地味な僕が。
明らかにオタクな僕が。
緑間真太郎に名前を呼ばれ
望まれて隣の席に座っているなんて。
プライドの高い女性陣からしたら
万死に値するに違いない。
というかマジで
勘弁してくれ…!

取り敢えず突き刺さる視線から
逃げ出したくて
係わり合いたくはないが
緑間真太郎に礼を言って帰ろうと
緑間真太郎を見上げると、何だろう。
違和感がある。
何が、とは言えないけれど。
多分、嫌な予感。



「…あの、緑間部長。
先程は有難う…ござい、ました。」

「…あ、ああ。」



重なった視線を挙動不審に振り解き
俯く緑間真太郎に増える不信感を
隠そうともせず
早々に退陣しようと立ち上がる。



「…赤司?」

「あー…、帰ります。」

「じゃあ俺も帰るのだよ。」

「は?」

「さつきと紫原に頼まれてるんだ。
ついでに言えば俺も酒の席が苦手でな。
行くぞ。」



ぐいっと強引に繋がれた掌に
プライドの高い女性陣の断末魔が響く。
僕、明日から無事に過ごせるのかな…。
遠くなる宴席を見つめながら
僕は明日からの自分を憂うしかなかった。
取り敢えずさつきと敦。
何で目立つコイツに僕の事を頼んだ!


























 








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