それが愛だと分かるほどには聡明で

act.10


 
 




 


例えばの話。

明日君が死んでしまったら。
 明日僕が死んでしまったら。


僕らの世界は確実に
 崩壊するに違いない。






「…何で、此処に居るの」



青峰という男が帰っても
彼に抱き上げられたままの僕は
疑問だった事を訊く。
彼は暫し逡巡し、照れ臭そうに
頬を掻きながら笑った。



「征華っちに逢いたくて…、
じゃ納得して貰えないッスか?」



彼は普通の女の子に吐けば
喜ぶだろう台詞を僕に言う。
嬉しい、と思う反面
何かの間違いじゃないのかと
眉間に皺を寄せ彼の顔を
覗き込む。



「納得出来るわけがない。
早く消えて。」

「もうボディーガードは不要、
なんでしたっけ…。」



嗚呼、苛々する。

彼の言葉に、
行動に。

自分の言葉に、
行動に。



わけのわからない感情が
僕の中で蠢く。



「俺、征華っちが好きなんス」



言わないで。

そんなこと、
思ってもないくせに。



「どう言えば、どう伝えれば、
征華っちは信じてくれるッスか?」



信じられるわけがない。



「愛してるんス。」



黙れ。



「征華っちがいなければ、
朝も明けない程に…」



煩い

五月蝿い

ウルサイ

うるさい





「僕は…好きだなんて、感情。
知らない。解らない。
…知りたくない。」

「征、華」

「どうせいつか失われる憶いなら、
初めから欲しくないんだ…」



君がいなくなったら
僕の世界は崩れるのに。

君はそれを畏れることなく
想いを言葉に変えられるなんて



つまり、



憶う重さの違い。




(君はきっと直ぐに
僕を必要としなくなる)
(そしたら僕は
どうしたらいいの)




「征華っち。俺は、「聴きたくない」

「征華っち!」



頬を掴まれ、
自然と下を向いていた顔が上へ。
瞬間、いつもの笑みを消し去り
真剣な表情をした彼と目が合った。



「俺は、君を失ったら生きていけないッス」

「うそ、だ…。」



顔を左右に振って
彼を見ないようにしたいのに、
彼の手に頬を包まれていて叶わない。



「本当ッス。でも、だからこそ、
変わらない関係のままではいられない。」

「…、……」

「憶いを形にしないまま、
征華を失いたくはないんス」

「………っ」

「征華。君の、君自身の
本当の憶いを…
俺に教えて欲しいッス」



彼の真剣な瞳に射られて
心臓は破裂しそうに脈打つし
頭はぼーっとして回らない。

でも、伝えなくちゃならない
言葉はちゃんと分かっていた。












「僕は、…僕も
   君が好き…。」



塞がれた唇は甘かった。










愛を紡ごう。






例えばの話。

明日君が死んでしまったら。
 明日僕が死んでしまったら。


僕らの世界は確実に
 崩壊するに違いないけど。



でもそれも、

ある意味世界の
楽しみ方かもしれない。


(最近やっと、
そう思えるようになったよ。)











 








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