今も平行線の上を歩いてる。

act.1


 
 



襲われる被害者と襲う犯罪者は
やはり似ているのだと思う。

双子の妹であるさつきに対して
誘拐やらを企んでいた犯罪者は
いざ実行しようと
さつきに近付くと皆、我に返ったように
善良な人間と化していくのを何度もみた。
さつきは笑みを絶やさず、
人間には悪い人がいないと思っていて、
常に隔たりも持たずに優しく接する。

そんなさつきに対して僕は
人間は基から悪い素質を
持っていると言う概念を主張し、
常に疑心と猜疑心を心の隅に
隠し持っていた。


だからであろうか。
声を掛けられ振り向いた相手は
巷を騒がせている
狂った殺人鬼だった。
身動きを取れないようにと
抱き抱えられた格好のまま思考に耽る。



「…少しは怯えてみせろよ!」



それがいけなかったらしい。
狂った犯罪者は怒りに任せ
刃物を僕の首に宛てた。



「…無闇矢鱈に恐怖心を煽るのは、美しくないなぁ。
だけど、そうだな。
三秒あげるから離してくれないか?」

「はあ?!」

「1…」

「テメエふざけてんのか!」

「…2」

「この…っつ!」



3…と口にしたのと同時に
狂った殺人鬼の腕から抜け出し
その反動を利用して鳩尾に蹴りを一発。
それだけで狂った殺人鬼は意識を手放した。



「征華さん…っ!」



名前を呼びながら駆け寄ってきたのは
仕事中だった筈の義兄で、
バスケット選手として活躍しつつも
全く目立たない、
不思議な程、存在感のない彼。

でも何故か
僕の周辺に不穏な空気があると
こうやって直ぐ駆け付けてくる。
だから僕は、コイツが嫌いだ。



「テツ、」

「嗚呼、良かった。無事だったんですね。」

「当然だろ。」

「でも征華さん、また立ち回りましたね。
征華さんは心臓の病気なんだから
駄目だと言ってるのに…」

「テツヤうるさい。」

「…決めました。
失礼ながら征華さんは信用ならないので
ボディーガードを雇います。」

「は?」



そうして後日、義兄が連れて来たのは
シャラ☆と後ろに効果音を付けた
金髪の酷くイケメンな男だった。













 








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