やさしいてのひら




結局征君が診察を受けている間
全くもって集中出来ず、
緑間君が帰ったのを見計らって
征君のいる部屋の扉を開けた。



「どうでした?」

『問題ないよ。』

「そうですか。なら良かったです」



ホッとして征君に抱き着く
征君は呆れてか
背中をポンポンと叩いてくれる
だけだった。
欲を言えば頭とか撫でて欲しいのに。



『テツヤ、仕事は終わったの?』

「…うっ」



痛い所を突かれてしまい
ぐうの音も出ない。
診察中に終わらせると言った手前
どう言い訳しようかと悩んでいると
ポンポンと頭に柔らかい衝撃があった。
頭を上げれば呆れてる征君の顔。



『仕方ないから執務室まで
一緒に行ってあげるよ。』

「来てくれるだけですか?」

『僕はカモミールを煎れて来る。』

「じゃあその後は
一緒に執務室に居て下さいね!」

『仕方ないね…』



サラサラと僕の頭を撫でる
征君は何処か遠くを見ていた。
此処ではない何処か。
もっと遠くの遠く。
征君が消えてしまいそうに
見えて僕は征君に力強く抱き着いた。



『テツヤ…?』

「僕を置いてったりしないで下さいね」

『どうしたんだい、テツヤ。
僕はアンドロイドだよ?』

「そう…ですけど、不安なんです。
征君が僕の前から永遠に
消えてしまいそうで」

『大丈夫だよテツヤ。真太郎が
いればそんな事にはならない。』



こんな時に緑間君に嫉妬するのは
間違ってるって分かってるのに
二人しか入れない
空気を纏ってる事が腹立たしい。
聞けばマスターだから
話してくれるだろうけど
それじゃあ意味がないんだ。
彼の意志で話してくれないと。
僕はいつも
僕に征君がやってくれるように
征君の頭を撫でた。



『テツヤ?』

「緑間君には負けません」

『は?』



取り敢えず今日の職務を
全うする為に執務室へ征君と
向かう。

職務を終えたら沢山頭を
撫でて貰おう。
彼の優しいてのひらで。

そしたら沢山僕も征君の髪を
撫でるんだ。
今までのありがとうを込めて。
これからも宜しくも込めて。









 








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