ふたりきりだから





「かまきり」

『りす』

「すいか」

『からす』

「すずめ」

『めだか』

「からすみ」


『…なぁテツヤ、
こんな事をして何が楽しい』

「えー…と。征君を
独占出来るところですかね」



ソファーに寝そべり
頭はソファーに腰掛けた征君の上。
征君は機械だけれど人工皮膚を
使ってるから適度に柔らかくて
心地好い。

昨日のお見合いで
気分を害した僕は
今日は休日と決めて込み
それに征君を巻き込んで
何とはなしに始めたのは
しりとりだった。

確かに征君じゃなくても
呆れるかもしれませんね。


でも仕方がないと思います。
約束を覚えていた癖に
人に見合いを薦めてみたり
僕の行動を読んで
迎えに来てくれたり

彼は僕の事を好きなんでしょうか?

尋ねれば
“勿論、マスターだからね”と
言う返事が返って来るに
違いありません。

何たって彼はアンドロイド。

マスター第一なのは
当たり前の事なのです。

そうじゃない答えを聞きたいと
思う僕は我が儘でしょうか?
それとも機械相手に愚かなのでしょうか。


僕は征君の膝から頭を上げて
座り直して征君を見詰める。
征君はどうしたのか
分からないのか小首を傾げて
こちらを同じように見詰めてきます。


あ、やばい…と思った瞬間には
彼に口付けてしまってました。

彼は驚いたのか
動く事がなかったので
つい悪戯心で先へと
進めてみようと
思ってしまいました。

彼の唇を舐め、
薄く開いたままだった咥内へ
舌を進入させていきます。

歯列をなぞり、上顎を舐め
舌を絡めては吸い上げ
室内にはぴちゃぴちゃと
いやらしい水音が響いて
若干酸欠でぼーとした頭で
このまま押し倒しちゃおうかな、なんて
思った瞬間。

僕は征君に
突き飛ばされていました。
決してマスターを
危険に晒してはならない
アンドロイドの征君が、です。



『……っ?!』



征君も自分がした事に気が付き
顔を真っ青にして
オロオロとしたと思ったら
部屋から出て行ってしまいました。

暫くして部屋に入って来たのは
執事長の黄瀬君だった。
珍しくオロオロしている征君を
見た黄瀬君が話し掛けると
征君は僕を
突き飛ばしてしまった事だけを
話したらしく
黄瀬君も驚いたらしい。
しかし征君を落ち着かせて
僕の様子を見に来たのは
良い判断だったと思う。
やっぱり彼を執事長にして
良かった。



「そりゃいきなりそんな事されれば
普通の人間なら突き飛ばすッスよ」

「ですよねぇ…。」

「でも赤司っちは」

「アンドロイドなんです。
まず主人を突き飛ばすなんてないし
仮にあったとしても自分で対処する筈ですよね」

「俺は機械に疎いんで
良く分からないッスけど、
なんかオロオロしてた時の
赤司っちは人間みたいでしたよ」

「ですよね、」

「一回緑間っちに来て貰ったらどうッスか?」

「………はい。考えておきます」

「じゃあ主人は無事だって
赤司っちに伝えときますね」



パタンと扉が閉められて
僕一人が部屋に残される。

確かに先日といい、今日といい
征君はちょっとおかしい。

僕は緑間君へ連絡すべく
椅子から立ち上がった。





 








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