俺だけの恋人。



部活のなかった、ある日。

黄瀬の家でのんびりと過ごしていたら
黄瀬が自分も載っている雑誌を広げ



「これ、赤司っちに似合いそうッスよね!」



と、太陽顔負けで笑った黄瀬の
笑顔が爽やかで眩しくて良く見えない。
それよりも問題だったのは
黄瀬が指差していた衣装が
女物だった事だ。



「ー黄瀬、俺は男だ。」

「え〜でもこんなモデルの子よりも
似合うッスよ、絶対!」

「お前のその自信は何処から来る?!
明日の外周30に増やされたいのか!」

「赤司っち着てもないのにそりゃないッスよ
せめて着て誰かに男だってバレなかった時に
外周30にして下さいッス!!」

「良いだろう。」



ーってアレ?
俺今、墓穴掘らなかったか…?



「じゃあ着て貰ってデートして貰いましょう
男に二言はないッスよね?赤司っち」



ジリジリと壁側に追い詰められて
ドンッと壁にぶつかって逃げ場がなくなる。
黄瀬とはいえば、先程の爽やかさは
何処へやら。
不穏な笑みを浮かべていた。


黄瀬が用意していたのは
あの雑誌に載っていた衣装と寸分変わらない
物だった。

大きめな白いファーのつけ襟に
細い赤いリボンが揺れて、
臙脂色のクラシカルなワンピース。
(秋と言う事もあるのだろうが、
腕の筋肉隠しだろい長袖)

ストッキングまで履かせられて
靴は足首で留めるタイプの黒い踵の高い
パンプス。(と言うらしい)

最後の仕上げにと、僕と同じ色の
ウィッグを被って馴染ませる。
ウィッグの髪に黄色の薔薇の
バレッタを付けると
満足そうに黄瀬が微笑む。

その後、軽く化粧もされ、
もう俺は精も根も果てた。
HPは0だ。

黄瀬はと言えば、いつの間にか
水色のカジュアルなシャツを着て
黒いジャケットを羽織り、
そのジャケットと同じズボンを履いていた。

手のひらサイズの木箱から
リングの付いた金色のネックレスと
中指と人差し指に指輪を嵌めていくのは
同じ中学三年生とは思えない程、
様になっている。



「じゃあ行きましょうか、赤司っち」



もう黄瀬の笑顔が悪魔にしか見えなかった。















「ー何、産まれたての小鹿みたいな
歩き方してんスか。」

「考えてもみろ黄瀬、俺は生まれてこの方
初めてこんな踵の高い靴を
履いているんだぞ。絶対こうなる!」

「え〜高々5センチのヒールで
そんな事言われてもぉ…。」



折角のコーデと美貌が
勿体無いんスよね〜…。と、
黄瀬が少し思案した後

グイッと腕を引かれ、その腕を黄瀬の腕に
組まされた。



「き…っ黄瀬!?」

「俺に体重掛けて大丈夫ッスから。
頭の天辺から糸で吊られてるって意識して
歩いてみて欲しいッス」



そう言い問題じゃない!ただでさえ
バレバレな女装をした俺と腕を組んだりして
それを週刊誌にでも撮られたりしたら
どうするんだ、と叫びたかったが
もう街の中心街で、そんな事のたもうたら
こっちのが注目を浴びてしまう。

仕方なしに黄瀬のに言われた通りに
歩き出すと、先程よりは楽に歩けるように
なった。
腐ってもモデルか。



「ほら、分かります?
右斜め前の男達なんて赤司っちから
目が離せないでいる」

「それは男だと分かって…」

「違いますよ、それだけ赤司っちが
魅力的って事ですよ」

「それなら先刻から女性の視線が痛いのは
お前のせいか、黄瀬」

「流石赤司っち、気配に敏感。
でもそれ以上に男達から俺は視線を
受けているって自覚して欲しいッス」



耳を擽るように、そう囁かれて
思わず赤面してしまうと、
ザワッと周囲が騒めいた。

何かしたか?俺は。
呆然としていると、



「…っも〜…っ赤司っち可愛すぎッス!
そんな可愛い顔、他の人に見せないで!!」



と言いながら黄瀬が大型犬宜しく
覆い被さって来た。



「離せ、黄瀬」

「外で気にせず、イチャイチャしたかった
だけッスけど、ダメッス!
可愛い赤司っちは俺だけ知ってれば良いんス」

「分かった、分かったから…っ!」



落ち着かせるように、背に腕を回して
撫でてやると
段々と落ち着いて来たのか
黄瀬の身体が硬直していく。
自分でも子供のようで
恥ずかしかったのだろう。

頭を上げれば、真っ赤に なった黄瀬がいて。
確かに恋人の可愛いところは
自分にだけ見せて欲しいものだと思った。




俺だけの恋人。

(しかしいつまでこうしてれば良いんだ?)









______________________
エリエリ69様。
黄赤で女装デートとのリクエストでしたが
赤司様に何を着せるかに躍起になって
しまった感が否めません…
肝心のデート部分が少なくて
申し訳ありません;;
返品・書き直し等いつでも受付ております。
この度は5000hit企画に御参加頂き
誠にありがとうございました!
これからもどうぞ宜しくお願い致します。

転載はリクエストして下さった方のみと
させて頂きます。

















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