欠落した感情。





人間は愚かで
醜い生物だ。

戦争や紛争は
月日が流れど
終わる事はなく、

憎しみと哀しみの連鎖は
崩れない。

人間だけが無駄に
殺し合っている事に
気付かないまま。



いっその事、
食せば良いものを…。



人間が人間を。

殺すのならば。

だってそうだろう?

他の動物は必要な時、
必要な分だけを
殺して食す。

人間だけなんだ
血肉の為以外に
血を流し、命を無駄に
するのは。


人間には心があると
云うが、
それを証明出来るのか?

どうやって?

無理に決まってる。

だって、

己の憶いは己にしか
解らず、

他人の憶いなど
到底理解出来ない。

自分はこう憶って、
こう考えていると
思っていても、


他の誰かに操られている
可能性だって、
否定出来ず


今、此処に自分が
存在していると思っているのは
己だけで、
他の誰も自分を認識して
いないかも知れないのだ。


もしかしたら、
これは過去の断片で。
本当の自分は何らかの理由で、
深い眠りについているだけ
かもしれない。

現か夢かも解らない。


本当の自分なんて、
自分自身が一番良く
解らないもの。


だから
自分も世界も
…信じられない。




でも、
君と出逢って
僕は


初めて
誰かを愛したかった
のだと
…知った。







桜舞う中、
炎のような
彼を見つけた。



「火神。」

「ーー征?」



どうした?とばかりに
眉間に皺を寄せる彼。

僕は誰かを
愛したかった。



「征、
好きだぞ。」



それを教えて
くれたのは、
…他でもない
君だから。


僕は君を愛したい。



「…何で僕なの」



一気に怪訝そうになる
君に、
また愛しさが
込み上げてくる。



「“キレイ”だったからだな。
 征が。
今まで逢った
人間の中で。」

「?」

「黒子ですら、
征の様に
“キレイ”じゃない。」

「馬鹿にしてるの?」



僕の眉間に
更に皺が寄る。
彼は折角綺麗な顔なのに
勿体ないなんて
思ってるんだろう。



「いいや?
寧ろ褒めているんだぜ。
汚れずに、穢もせず、
キレイなままのお前を。」



一歩、僕に向けて
踏み出す彼。



「そうは聞こえないよ」



一歩、僕も
彼へ踏み出した。



「ハハッ。
それは残念だ。
でも、決して汚れない
お前だからこそ、
愛したいと思ったのは
事実だぜ。」



ほんの少し、
近付いた距離に
安堵する。
僕は嘲笑を浮かべた。



「ー迷惑だね」



彼はその言葉に
苦笑しながらも
憶いを音にする



「お前は、そのまま、
自分の心に
素直でいろよ。」



どうか…



「…どうした?」



いつの間にやら
彼との距離は狭まっていて、
僕を見上げる彼の顔が
直ぐ傍にあった。



「何でもない」



と告げれば、
彼は小さく
溜息をつき



「…泣いてるのにか?」



云いながら、
服の袖で僕の頬を
拭ってくれた彼の手は、
とても優しくて。

頬を伝う熱い雫の存在を知った。

気が付かなかった。

僕は、泣いていたのか。

僕は、泣きたかったのか。



「…今日だけじゃなく
いつもそうやって泣け。」



なんて言いって、
泣き続ける僕を抱きしめた。


優しい君。

君がそのままで
いてくれるなら、

僕は世界と、僕自身を
信じられる。



やっぱり、
僕は君を愛したい。


少しだけ、自惚れても
良いのかな?




















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