暗闇に浮かんだ君の顔。

 
病弱赤司。







 

自分の咳で目が醒める。
かなり激しく
咳込んでいるらしく
喉と腹筋が痛い。
ついでに背筋も。

気管が大分狭くなっていて
余計な痰が纏わり付いている。
呼吸をする度ヒューヒューと
耳障りな音が止まらない。

取り敢えず水分を取らねばと、
ベッドサイドへ手を伸ばすが
何時もある筈のペットボトルが
見当たらず、僕の手は
虚しく空を切った。

このままではマズイと、
止まない咳に苛立ちながら
端座位になろうと
身を起こそうとした瞬間。



「…ーっ、」



呼吸が詰まり、
息を吸い込む事しか
出来なくなった。
息が吐けない為、
身体に二酸化炭素が溜まる。
苦しいクルシイくるしい。
視界が滲む。
漠然と過呼吸も
こんな感じなのかな、って思う。
僕は過呼吸になったことが
ないから比べられないけれど。

なんて考えてたらもう限界。

霞む世界に別れを告げて
僕の意識はブラックアウトした。











「…っ、ッ」

唐突に意識が浮上し、
自分が今、どんな状態なのか
把握するのに時間が掛かった。

確かにベッドで寝ていた筈の
僕は自室からリビングにある
ソファーの上で端座位…
所謂座っている状態に
変わっており、
寒くて風邪を引かないよう
掛けられた布団に雁字搦めに
されている。
発作で意識を手放した僕が
一人で此処まで
歩いて来れる筈がないと、
疑問符が浮かんでは消えた。



「起きちゃったー?身体どうー?」



玄関からリビングへ続く扉が
開いた先に、
買い物袋を携えた紫原が
僕が起きた事に気が付き
少し慌てた様子で寄ってくる。



「へ、ぃき…」



咳で思った以上に
喉を痛めたらしく、
声が上手くでない。
億劫になって
なんでいるのか、と
視線で投げかけると紫原は
察したのか
僕の隣に座り、
買ってきた物を取り出しながら
口を開いた。



「なんかさー、
急に寒くなったしー。
台風も近付いてるって聞いてー。
前、赤ちんさ。
こういう時、
気圧の変化がどーのこーので
体調崩したりしやすいって
言ったじゃん?
気になって来てみたら
案の定発作起こしてるし。」



言ってて気恥ずかしくなって来たのか
紫原は頭を掻きむしり
手で顔を隠してしまう。
(髪から覗いた耳が
真っ赤だったのは
言わないでおこう。)



「ありがとう、敦。」



助かった、と告げて
髪に口付けて撫でると
紫原は勢いよく
真っ赤な顔を上げて、
何か言いたげにワナワナと
唇を震わせたが
言葉にならなかったのか
布団で蓑虫状態の
僕を抱きしめた。












 








人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -