Sprinter。

 
中学時代







「お前ら本当に付き合ってんのか」


事の発端は青峰のこの一言だった。




渦巻く螺旋 螺旋

決して交わらない
それは遺伝子と似て非なるもの。

崩れていく先で何を見る…?





麗らかな風が心地よい晴天が
包み込むような暖かさを
提供してくれている、
そんな昼休み。
屋上でいつもの6人。
昼食を摂っていた時、
青峰君は、
意図がよく分からない
問いかけをしてきた。


「何言ってるんだ、大輝。」

「付き合ってるに決まっているでしょう?」


馬鹿にしたように言い放つ征君と
当然と胸を張る僕の二人から
視線を向けられて青峰は思わず
言葉を飲み込んだが、
引き下がれないのか
食い下がってくる。



「だってお前ら
付き合ってる割に
いちゃつかねえし…」

「…これだから童貞は。」

「なんだと…っ!」

「あのね、大輝。愛情の表現の
仕方なんて十人十色なわけなん
だよ。
俺やテツヤみたいなのもいれば
喧嘩ばっかりのカップルだっている。
ドラマみたいに
四六時中いちゃつかなきゃ
恋人じゃないなんて
法律はないんだ。
恋に夢を見ていいのは
小学生までだよ。」


僕の肩に頭を預けながら、
美しい顔に嘲笑を浮かべて
青峰君を糾弾する征君は
もう話は終わりだというように
今度は僕の腕を取って
じゃれ始めた。
こうなってしまうと
もう青峰君は征君の視界に入らない。

それを経験で知っている青峰君は
溜息を吐きながら
苛立つのを抑えようと自分の頭を掻きむしる。
黄瀬君は苦笑を浮かべながらも相変わらず
雑誌に目を通して我関せずを貫く。

暫くして落ち着いたのか、
青峰君は僕の膝で寝てしまった
征君を一瞥した後
僕を真っ直ぐ見て口を開いた。


「俺はただ…心配だったんだよ
。赤司は何かとお前に
金せびってるみたいだし。
お前は俺と言い合いする赤司を
止める気配もねえ…」

「……、」

「そんなんじゃ
付き合ってる意味なんてねぇし。
別れても…」

「青峰!」


咎める様に声を荒げ
青峰君の言葉を中断させたのは
緑間君だった。
緑間君の剣幕に
青峰君は戸惑ったように視線を
彷徨わせる。



「別れても一緒、だよ。」

「征君…!」



寝ていたと思っていた征君が
瞳を開き
その紅玉と琥珀を露にした。



「良いよ、テツ。別れようか。」

「征君。冗談でも怒りますよ。」



視線を合わせ、怒りを表しても
征君は肩を竦めるだけの
お決まりなリアクションを
するだけで
八つ当たりだと分かりつつ
こんな状況を作り出した青峰君に
殺意が沸く。



「冗談じゃないのに。ま、いいや。
お金がある内は付き合ってあげる。」



ひょいっと身体を起こすと、
征君は薄く笑って
屋上を後にするのを
僕含め5人。
見送るしか出来ない。



「峰ちん…っ」



屋上に完璧に征君の
気配がなくなってから
紫原君は青峰君の胸倉を掴み上げ、
その突然のことに青峰君は驚き
無防備なまま殴られる。



「なんだよ、別に変な事言ってねぇだろ?!」

「お前…っ!」



このままだとバスケ部始まって以来の
最強であると噂される
表番と番犬の死闘が始まってしまう。
紫原君は征君のことを
主人のように大切に思ってくれてるし、
青峰君も青峰君で友人の
僕と征君を心配してくれての
発言だったんだろう。
(大きなお世話だけど。)



「良いですよ、紫原君。
青峰君の言うことも一理ある。」

「黒ちん!!」


二人の間に立ち、紫原君を制止する。
紫原君は信じられないと
僕の名を呼ぶが、意に介さず
紫原君に殴られて未だに体制を
立て直せない青峰君に
視線を向けた。


「心配してくれて有難うございます、
青峰君。
でもね、そろそろ分別を身に付けようか?」

「……っが!」



にっこりと笑うと青峰君の
腹に蹴りを入れる。
諸に入ったのか、
静雄は息を詰まらせ咳き込む。
それを無感情で見下ろした。



「青峰君、征君はね。
どうしようもなく孤独なんです」



帰る家はいつも電気がついてて
温かい食事が用意されて
迎えてくれる家族が居る君には
分からないだろうけど。



「差し伸べられる腕を
どうしていいか征君は知らない。」



だから僕たちはこれで良いんですよ。



驚愕に目を見開く青峰君は
珍しくて興味深かったけれど、
征君を追うため青峰君以外の
4人で屋上を後にした。













渦巻く螺旋 螺旋 螺旋

決して交わらない
交わらない。

それは遺伝子と似て非なるもの。
螺旋の回廊 出口はない。

ぼろぼろと崩れだす。










「征君、」

やっと見つけた征君は、
学校ではなく
僕のマンションにいた。
まあ予想の範囲内ですけど。



「テツ、ヤ。」

「ただいま、征君。」



両手を広げ抱きしめると
身体から力を抜き
ことり、と預けてきた征君を
受け止め
あやすように背を撫ぜる。


「テ…、ツヤ」

「征君」

「テツ…ヤ、」

「征君」



いくら抱きしめても
征君の腕が
僕に回されることはない。



「大好きですよ、征君。」








渦巻く 螺旋 螺旋 螺旋

決して交わらない。
交わらない。
交わっては、ならない。

それは遺伝子と似て非なるもの。
同一で同一でない。
生命の螺旋。

廻る 廻る 廻る
螺旋の回廊 出口はない。

解放される為の合言葉。


「     。」


その言葉の意味を、
腕の中にいる彼は知らない。







SPRINTER

(壊れる螺旋に逆らってでも、君と居るよ。)





















 








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