泣いて泣いて泣いて。


 




(気付いたときには、もう遅かったけれど。)








 
  











もし自分が女であったなら、
この恋の行く末は違うもので
あったのだろうかと。
後悔にも似た愚かな幻想を抱くのは
何も今日が初めてではない。

ドロドロとした感情が心を蝕む。
心が汚く荒んでいくのが解った。



もしも、
もしも僕が女だったら。


彼女の様に
彼の子供を身の胎に宿して、
彼を永久的に自分だけのモノに
してしまえたのに…。



実際に彼の子供を孕んだのは
女である彼女で、
彼女は幸せそうに微笑んでいた。

彼は、
それでも僕が好きだと、
愛していると。
そう言ってくれたけど。


(優しい君に堕胎しろだなんて
言わせられない。)


別れを切り出したのは、
やはり僕からで。

彼は最後まで僕に愛をくれた。



だから、それだけで良いんだ。

君が苦しむ必要はないよ。
結局は
君に浮気させてしまった
僕がいけないんだから。


ねぇ、喧嘩ばかりだったけど
君は楽しかった?
僕と一緒にいて、
少しは休めたかな?


僕は楽しかったよ、
君がいてくれたから。
どんな時も、いつも。


(一度くらいは真正面を向いて、
君に伝えられれば良かったね。)


ただ、
最後まで言えなかった
言葉があるんだ。
(気付いたときにはもう、
遅かったけれど。)





泣いて泣いて泣いて。

プライドをかなぐり捨てて喚き散らして、
君を引き止められたら良かったのに。






 








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テーマ「人外ファンタジー」
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