3「…アルト…おっきいね…。」
「…?」
「私ね…実は…アルトの歌舞伎…ちゃんと見てたよ。」
―舞台も数…ううん、何十回も見に行った。
―その度、舞台の上の『早乙女アルト』は私の知らない人だった。
―とっても綺麗で
―とっても儚くて
―もう、手は届かないと思った。
―早乙女の家を勝手に飛び出したのは、私だった。
―アルトの舞台を見れば見るだけ家を出たこと後悔して。
―あぁ、アルトはもう私の事なんて忘れちゃったんだと言い聞かせてた。
「馬鹿か、お前。」
「…え?」
抱きしめられている腕の中から、アルトを見上げるナマエ。
プイッと、少し頬を薄紅に染めたアルトは顔を背ける。
―ナマエが居なくなって、俺は半ばヤケになり歌舞伎に打ち込んだ。
―アルトが遠くに感じ、再会を諦め、パイロットとして戦いに明け暮れた。
―演じることが全てだった。
―戦うことが全てだった。
―俺が生きてる証明…存在意義だった。
―私が生きてる証明…存在意義だった。
―再会した時、会えなかった時間が倍以上長く感じた。
―再会した時、会えた事がすごく嬉しかった。
―久しぶりのナマエは、ひどく遠くに感じた。
―久しぶりのアルトは、やっぱり遠くに感じた。
―でも
―でも
―でもナマエは変わってなかった。
―やっぱりアルトは変わってなかった。
―俺は
―私は
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