2「ですから、監督がどうしてもこの曲じゃイメージに合わないと。」
「いや、でも5回もリテイク出してるんですよ?これ以上は…」
「サラが歌う風の歌はこの作品の要です。そちらがねじ込んだシェリルの歌を主題歌にするんですから、風の歌は妥協しませんよ!!」
テントの下で話し合いをする3人。
小耳にはさんで…いや、聞こえてしまったシェリルは誰にも止められない。
シェリル・アルト・私の三人でそのテントへと足を運ぶ。
「―…聞き捨てならないわねぇ。妥協で私の歌が使われるの?」
「おぉ!ミスシェリル」
「だ、妥協だなんてめっそうもない!」
「ジョーダンよ。この映画の為に書き下ろした曲じゃないんだから、ハマらないのは当然よね。監督さん。なんだったらそのサラの曲、あたしが書きますけれど?」
「ちょっとシェリル、そんな上から駄目だよ。監督さん、みなさんすみません。でも、シェリルなら必ず良い曲を書きますよ。御贔屓くださいね。」
「…すこし考えさせてくださいとの事です。」
「必要ならいつでも言ってください。良い作品を作りましょう?」
「私も協力します。」
「シェリルさん!!」
「あら。」
「あの!私主演の…!」
「ちゃんと上ってきているのね。」
「はい!」
主演女優・ミランダを素通りして、後ろにいたランカへと歩を進めるシェリル。
「ほら、アルトにナマエ。あんた達も何か言ってあげなさいよ。」
「っ?!よぉ」
「ランカ、さっきぶり!」
「うん。でもアルト君、どうして?」
「命令さ…例のこいつのドキュメンタリーも全面協力とかで。」
「…!!!失礼ですけどあなた…早乙女アルトさんでは??!」
先ほどテントで会話してた、監督の通訳してた人だ。
「あ?…ぁあ」
それまで一言も話さなかった監督がすさまじい速さでアルトの手を握って…る…?
「あ、あの!映画に出てくださいませんか…??」
「えぇっ!?」
驚愕を隠せない…というか、すごく嫌そうな顔してる…アルトってば…。
「見ましたよ!あなたの舞台!!桜姫東文書の桜姫!!」
「っく!」
―そして最大限の嫌そうな顔、いただきました。
「さくらひめ…?」
「アルトの大人気作。歌舞伎の演目の中でも、屈指の濡れ場のある作品。アルトの苦い思い出の一つ。」
「へ…へぇ…」
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