3
「ここにいたのか、名無し」
少し呆れたような表情をした張遼の姿が現れた。
彼は、二人の姿に気が付くと会釈をする。
そして、名無しの近くにやってきた。
張遼と名無し。
実を言えば、恋仲という関係を持っているのである。
「なかなか来ぬから、少し心配をしていた」
「ごめんなさい、私ったら―。月が綺麗なものだから」
「大方、そんな事だろうと思っていたのだが―」
まさか的中するとは思わなかった―。
張遼は苦笑したので、名無しは笑ってしまった。
その様子を見て、君主と軍師は顔を見合わせる。
「お邪魔になりそうだから。ここは退散しましょうか、曹操殿」
「そうしようかの…」
こうして、二人がいなくなった。
それを確認した後、張遼は名無しを抱きしめる。
名無しは、随分と自分の体が冷えていた事に気が付いた。
そう言えば自分は、上着を着ていなかった。
「寒い季節になっているのだから、何か上に着て貰いたいものだな」
「そんな風に言って、実はこれが目当てだったんじゃないのかしら?」
ふと顔を上げてみれば、張遼は顔を真っ赤にしていた。
どうやら、図星らしい。
それが妙に可愛くて、笑ってしまった。
「何故、笑う?」
「おっかない武将でも可愛い時があるのね、と思って。文遠は真面目だから―」
「そうか」
張遼はふと嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう、文遠」
頬に接吻をして、するり、と張遼の腕の中から逃れる。
地に置いていた二胡を手にすると、振り向く。
何か言いたげな男に向かって、名無しは一言投げた。
「続きは後で、ね」
「ああ、待っている」
答えた時の顔がとても優しげで、何故か体が熱くなった。
ああ、我ながら恥ずかしい言動をしてしまった。
後悔をしても、後の祭なのである。
終
――――――
まさかの山田さん落ち。
ナンパ二人組がただ書きたかった…w
郭さんが天女に会った話は管理人の捏造です
(2013/11/20)
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