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家に帰ると、リビングで司馬師が本を読んでいた。
そわそわしているのか、読むスピードが断然遅いように見える。
それを横目で見ながらも、名無しは台所に立った。

丁度その時、家に電話が掛かってきた。
運よく近くにいた司馬昭がそれに出ると、電話の相手は、お父さん―司馬懿かららしい。


『えっ、んなこと俺に言われても』

『まあ、とりあえず分かったよ、父上』

『母上に伝えたりとか、します?』

『はいはい、分かりましたよー』


そんな会話をし、電話が終わったのか、ふう、と司馬昭は溜め息をつく。
「何の電話だったんだ」と司馬師が聞いてきて、それを話し始めた。


「あー。なんか、ライバル業者の諸葛亮とかいう人と何だか喧嘩して、胸糞悪いから1日ほど家を空けるって言ってた」

「そうか…。全く、父上は…」

「(うわあ、苦しい理由…。)」


名無しは心の中で思いつつ、肉まん用の皮が出来たので、今度は中に詰める餡を作り始めた。
父親が1日ほど家を空けるのは、司馬家にとっては普通のことらしい。
理由が毎度の事ながら、何処かの誰かさんと喧嘩したから。
司馬兄弟はさほど気にしてはいないようだが、怪しいと名無しは感じている。


―ピーンポーン。


玄関のチャイムが鳴る。
どうやら誰かが来たらしい、司馬師が一度窓の外を見る。


「昭、客人だぞ」

「えっ、俺?」


玄関にいたのは、王元姫だったようだ。
中に入って来て、律儀に「お邪魔します」と一声かけてきた。
先ほどまでの空気が何だか少し穏やかになってきたように感じた。


「元姫ちゃんだっけ?」

「はい、そうですけど」

「もし大丈夫なのであれば、手伝わない?」


ちょいちょい、と手招きをした。
王元姫は首を傾げたがすぐに、台所に来てくれた。
肉まんを作っていることを話すと、微笑んで「お手伝いします」と言ってくれた。






彼女の手も借りてか、たくさんの肉まんを作ることが出来た。
観音開きに入っていた蒸し器を見つけ、それで肉まんを蒸かし始める。
徐々にいい匂いが漂い始め、匂いに釣られてか、司馬昭が様子を見に来た。


「(これなら、兄上も機嫌直りますよ)」

「(ふふっ、そうだといいわね)」


小声でそう会話をしてから、蒸し終わった肉まんの入った蒸篭をリビングに運んだ。



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