―魔法空想国フェンニーニ。

それは、ジョーが最近始めたPCゲームだ。

登録は無料で、一部課金制のRPGオンラインゲーム。
自分の好きなようにアバターが作成でき、ファンタジーの世界を楽しめる。
選べるジョブも色々あり、ジョーは騎士を選び、空いている時間によく遊んでいる。

ゲームを勧めてくれたのは、ジェットだ。

彼は今、ニューヨークに帰っている。
そこでアルバイトをしつつ、休日にはフェンニーニにいる。


「フェン友が少ないからよ、一緒にプレイしないか？」


それが、勧められた時の言葉だ。
最初は断ろうと思ったのだけど、検索したら何だか面白そうで―。
すぐに登録して、アバターを作成し、勧めてくれた張本人に連絡したのだった。




＊

今日は休日―。
外は雨が降っていて、用事も何も無い。
ジョーはフェンニーニにすぐさまログインし、広場に行くことにした。

この仮想空間には、ロテット広場という所がある。
そこでプレイヤーは、フェン友(いわゆる、フェンニーニ友達)と待ち合わせをする。
やはり、そこへ行って見ると、沢山のプレイヤー達がいる訳で―。
見慣れた姿も見つけることが出来た。


「やあ、ジョニー。今日も一緒にクエスト行くか！」


茶髪の騎士(ジョー)の近くに、赤茶色の剣士が近付いてきた。
それは、ジェットのアバターである。
そして、『ジョニー』というのは、フェンニーニ内でのジョーの名前だ。


「ジェイド、今日は何のクエストに行くんだい？」

「コルルオクトパスを狩りに行こうかな、と」


ジェイドことジェットはそう言う。
チャットがあるけれど、無料通話でこういった会話をしているのである。


prev next
back