『二番線に、普通、○○行きが参ります』
そんなアナウンスを聞きつつ、ジョーは階段を降りていた。
青色のボーダーシャツに気に入って買ったジーンズをはき、紺色のジャケットを羽織り、まるで爽やかな風のようだ。
それでもって栗色の髪をなびかせているので、何人かの女性は振り向く。
しかし、そんなことに彼は全く気がついていない。
「(何とか、間に合って良かった―。)」
丁度、乗る予定の電車がやって来た。
止まるのを待ち、ジョーは車内へと乗り込む。
席は珍しく何処も空いているような状態で、適当な場所へ腰を下ろす。
そして、おもむろにジーンズのポケットから携帯を取り出すと、すぐさまにとあるアイコンをクリックした。
スマートフォンを買ってから一週間後くらいにハマッたパズルゲームである。
同じ色のものを消すという単純作業だが、これがなかなか面白い。
「(流れてる音楽も結構カッコいいんだよな…。)」
そう思いつつ、イヤホンを装着する。
漏れないようにというのを考えつつ、気持ちは少し音量を大きくする。
そのゲームでも、『イヤホン・ヘッドフォン推奨』の文字があった。
何日目かのログインを果たし、ボーナスを果たすと早速クエストに取り掛かる。
『○○○、○○○に到着でございます』
数分後、アナウンスが流れた。
電車のスピードがゆっくりと変わり、駅に到着する。
何人かの人が乗車してきて、ジョーはふと顔をあげ、目を丸くした。
同じ車両に乗ってきた女性の衣装が真っ黒だったからだ。
いわゆる、ゴシックロリータという奴である。
雑誌などで見たことがあったが、実際に着ている人を見るのは初めてだったからだ。
見ているのを気づかれたのだろうか、女性もこちらを見た。
ジョーは少し恥ずかしくなって、再び液晶画面へ視線を向ける。
それでもやはり、気になってしまって、少しだけ彼女の姿を見た。
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