side 親衛隊員

KOIする会長様



会長様がいるところに、親衛隊あり。
僕は鷹取生徒会長様親衛隊の平隊員である。
今日は会長様とその想い人のお話をしよう。


「会長様だ」
「石田先生もいらっしゃるぞ」

そんな小さな喧騒と共に二人の長身を中心に円のように集う人たち。
そのほとんどが生徒会長様親衛隊員である。
僕らの想い人である生徒会長様は臨時の生徒会顧問である石田先生にメロメロなわけだが僕達の海より広く深い会長様への想いは"ツンデレな会長様の恋路を応援しよう"、"会長様を僕達の手で幸せに"そんなスローガンから現在"会長様と付き合い隊"から"会長様と石田先生をくっ付け隊"になっている。
現に僕の周りの親衛隊員達はどこか恍惚とした表情で会長様と石田先生を見詰めている。
うん、今日も会長様親衛隊ガチ勢はキモい。


会長様が懐から何か取り出した。
あの可愛らしい色合いの物体は…クッキーか。
何を隠そう我らが何様俺様会長様の趣味はお菓子作りである。
この会長のギャップがたまらん、とは殆どの親衛隊員の口癖である。
しかし、毎回毎回石田先生の為に作るのに恋愛方面に関してはめっきり奥手な会長様は渡せる時より渡せない時の方が多い。
その度に慰めるのは親衛隊長の仕事である。
会長の親友でありながら親衛隊長を勤める彼には密かな恋心を伝えているが、もはや態度でバレバレなので全校周知の事実である。

急に石田が会長の首筋に顔を近付ける。
ばか!うちの会長は純情なのに何してくれちゃってんの!
固まったじゃん!
何かゴニョゴニョ会話しているが聞こえない。
やむを得ず近付く。

「おれ、鷹取のクッキー好きなんだよな」
「へえ、そうか」
「くれないのか?」
「何故俺がやらなきゃならん」
「そうか、くれないのか」

おーい、会長様ァ、今日もナイスツンデレですね!
いや、いい加減素直になれよ!
このパターン何回目だよ!
毎回渡せるのか渡せないのかハラハラするこっちの身にもなってくれ。

「しょうがないから、食わせてやってもいいぞ」

oh…
もう、なんも言えねー。
素直じゃないのもここまでくるといっそ潔いねー。
周りの親衛隊員の顔にも不安の色が滲み出す。
親衛隊長にメールいれた方がいいかなー。

「いや、鷹取いやなんだろ?無理にとは言わないから」

あざといー!
毎回思うけど石田先生あざといー!
この天然タラシめ!
我等が会長をタラシ混みやがって!
切ない笑顔を浮かべ去ろうとする先生に更に切ない表情で見送る会長の図を想像したにも関わらず、会長が予想外の行動に出た!
腕 を 掴 ん だ !

初めての会長からの接触!

今この時初めて親衛隊員達の心がひとつになっただろう。
今日は赤飯で決まりだな、と。

しかも自分から掴んでおいていっぱいいっぱいになって固まってる会長可愛いいいいい!
数名踞る生徒が出た。
しかし、僕は!この絡みを!見終わるまでは!死ねない!

「コレ、ヤル」

それだけ呟いた会長は持ち前の俊足をいかし、走り去ってしまった。

「なんで片言なんだ?」
そう呟いた石田先生の顔にはうっすらと笑みが浮かんでいた。

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